おおまちまちめぐりその1

 周知の通り,長野県内では年4回,草競馬が行われています。順に,信濃大町,高ボッチ高原,安曇野,望月です。このうち望月は「信州の菊花賞」と呼ばれています。
 さて。望月が信州の菊花賞だとすると,その他の3つはどうなるのでしょうか。菊花賞は時期的にも合致してますし,ダービーを名乗るのはなんとなく気が引ける,引っ込み思案な日本人的にも菊花賞を名乗ることへの抵抗感は小さいです。となると,客観的に順番を重視して皐月→NHKマイル→ダービーとするのがよさそうです。しかし,一番手の信濃大町はぎりぎり皐月(5月)に行われているものの,今年のダービーが5月のまさに大町草競馬当日に行われるというなんとも分かりづらい状態になっております。
 とまあ,このあたりをいろいろ考慮した結果,望月以外は「信州の○○」を名乗っていないという現状になっているのでありました。年4回とすると,羽田盃→東京ダービー→東京王冠→JDDという一時期の南関の並びをもとに名付けた方がいいような気がしなくもないですが,信州の人が南関の呼称を使うのはそれはそれでおかしいよな。

 まあ,ごたくはおいておいて,信濃大町。パッと聞いてもどこにあるか分かりません。調べてみると,松本から電車で奥に入っていくという構図のようです。電車だとかなり大変なことになるようでしたが,良くも悪くも通過地点にお住まいの方々が多忙で飲む都合がつかず,道中どこにも寄らないのであれば高速バスがもっとも便利です。この高速バス,びっくりしました。「白馬行」です。白馬ですよ,白馬。白馬ってこんなところにあるんですね。白馬の会とか名乗ってるのに全く知りませんでした。「こんなところ」とか書きましたが,「信濃大町の先」だということは分かっても,具体的にどこにあるのか未だに分かっておりません。いずれにせよ,人生で初めて「白馬」の名前を馬以外の場所で,身近なものとして視認したのでした。

 この大町経由白馬行きのバスですが,想像以上に混んでました。ほぼ満員です。土曜日午前中の便や,日曜の最終便なら理解できますが,土曜の昼便も混んでます。どんな人が乗っているのだろうかと思っていたのですが,特に特徴はなく,年齢層も性別もばらばらでした。強いていうなら家族連れや団体よりも一人客が多かったです。う〜ん,みなさんどういう属性の方々なのだろう……。

 そんなわけで,高速日野バス停から乗り込みます。かつては家から死にそうになりながらここに向けてダッシュしたこともありましたが,この日は立川で自爆したので,時間に余裕を持って行くことが出来ました。おかげで,交差点のセブンイレブンでトイレを借りる時間的余裕までありました。

甲州街道駅から高速日野バス停までは迷いようがない感じ 甲州街道駅 日野バス停 セブンで借りずとも
ここにトイレがありました

 高速バスは,途中双葉SAと梓川SAを経由して,無事信濃大町に到着。土曜の昼は道がすいているので特に遅延なし。
 ここに来て初めて知ったのですが,どうも信濃大町はかの有名な黒部ダムへの観光の拠点のようで,この日は「くろよんまつり」というお祭りが行われていたようです。おそらくそのせいだと思うんですが,旅館近くのスーパーでおにぎりと焼きそばが投げ売りされておりました。
 なお,黒部ダムに比べて草競馬はかなりマイナーなようで,旅館の方に「草競馬に行きます」と伝えても全く理解していただけませんでした。観光協会さんはもうちょっと頑張ってもいいんじゃないかなー。

梓川SA 早春賦は旧制大町中学の校歌だった,
ってことでいいのかな
地図

 さて,翌朝の行動をどうするか。実は何も考えずに大町に来てしまったので,これを夜になって必死に考えていたのでした。当初案では,いつもどおり歩きまくる予定だったのですが,信濃大町駅にはレンタサイクルがあることが判明。これを借りるのもありかな,などと考えたりなんだりしていたのです。最後まで検討したのは,霊松寺という場所。いろいろあって面白そうなんだけど,場所が悪いんだよなあ。当初は,霊松寺→若一王子神社→草競馬→観音寺とひたすら歩きまくるルートを考えていたのですが,いろいろ検討した結果,とりあえず国宝のある仁科神明宮までタクシーで向かうことにしました。
 長野県のタクシーは100円ずつ上がっていくというスリリングなタクシーであることは昨年の望月で知っておりました。とりあえず,駅前でタクシーに乗り込みます。ちなみに,タクシー乗り場は駅前と駅向かいの2カ所あるようで,会社が違うようです。

 仁科神明宮までは2700円。日野→信濃大町のバス代金を考えると,鬼のような値段だな……。「帰りも呼んでね」と運転手さんに言われました。そりゃまあ運転手さん的にはおいしい客だよな。

 さて,そんなこんなで,急遽訪れることにした仁科神明宮。到着するといきなり「仁科二十四番神宮寺」という表記。どうも仁科三十三観音というものがあるらしいですな。それはともかく,神仏習合感丸出しの神宮寺という名前のお寺やお堂は特に見当たりませんでした。やっぱり堂宇自体は破却されて,場所として神宮寺があったという痕跡だけが残っているのかな。

神宮寺 三本杉。突風で真ん中の木が倒壊したようです。
よくぞほかに被害が出なかったものです
社号標は単に「神明宮」 バスは5月には走ってません
ペット禁止
「マーキングを防ぐため」という
マイルドな書き方がいいですね
国宝解説 社叢について 環境保全地域


手水舎
2段にわたる手水鉢って
面白いですね
下で支えているのはなんだろう……
仏教的香りがするような
摂社末社があちこちに
詳しい解説もついていて興味深いですが全部見て回るには
時間に余裕が無く…

 左手に折れて,いざ本殿方向へ進んでいきます。
 朝早いので社務所はもちろんしまっておりますし,宝物殿もお休みであります。待合所があり,そこにもいろいろ面白いものが展示されているようでしたが,当然待合所も固く閉ざされておりました。まあ,開けておくと変な人が住み着くかもしれないから仕方ないですね。

鳥居 天神様だけ特別扱い 奥への道
鳥居が横に幅広く見えます

水がとてもきれい
鯉に恋い焦がれ

 だんだん国宝が近づいてきます。階段をのぼっていくと,まず神門が見えます(拝殿かと思ったら神門だった)。
 ここでお参りを済ませ,遠目に国宝社殿を見て帰ろうと思ったら,あれれ,神門脇の扉が開いております。これは別に「扉を閉め忘れた」といったたぐいのものではなく,明らかに「入ってお参り下さい」といいたげな開き方をしております。国宝社殿をこうして間近で見られるのはいいんですが,放火とか酔っ払いが小便引っかけるとか,そういった類のことがおきる心配はないのだろうか……。それもこれも,街中から遠く離れた場所だからこそ可能なんだろうな。

鳥居 神門 作法
長野は結構細かく書かれてます
神門左手の摂社 神門とまわりの木々 神門右手の社殿 ご案内

 なんにせよ,近づいて参拝できることに感謝して,中に入ります。中に入ろうとしたところで警報機が作動して警察登場,などということにはなりませんでした。よかったよかった。
 そんなわけで,国宝社殿に近づきます。正直,見た目が非常に綺麗です。とても国宝級の歴史ある建造物には見えません。雪やら何やらで結構ダメージ受けそうな気がするんですが,普段からしっかり手入れされてるんだろうなあ。
 国宝指定されているのは本殿と中門で,間にある釣殿は付属物という扱いになっているようです。独立していると考えるか付属物と考えるかは文化庁の胸先三寸なんでしょうが,予算やその他の面からはどっちがいいのだろうか……。

(旧)御神木 ここで説明されている木がどれなのか,
いまいちはっきりせず……

 さて,神社をあとにした時点で時間は7時45分頃。安曇沓掛駅の次の電車の時間は8時04分。おおざっぱにGoogle Mapで見る限り,神社から安曇沓掛まで直線距離で約2キロ。完全にあきらめムードでのんびり参拝していたのですが,もしかしたら走れば間に合うかもしれない。
 そう思いながら,軽く走って駅に向かい始めました。実は「キロ7分程度だったら楽勝じゃないか」などとなめた発想で序盤のんびり道ばたの小さなお社を撮ったりしていたのでありました。
 が,寄る年波の問題なのか,ウォーキング用と名付けられていたとしても所詮革靴なのがいけなかったのか,そもそも「直線距離で2キロ」というのが間違っていたのか,とにもかくにも途中の橋を越えたあたりで絶望だと判断。まあ,次の電車になったらなったで,大町到着が8時55分で,9時までちょっと待てば自転車を借りられます。じゃあまあ自転車を借りてまわりながら競馬場(運動公園)を目指せばいいか,という結論と相成りました。
 それにしても,このさきどれくらいアップダウンがあるのか分からないのに(結果としてほとんどなかったから助かりましたが),走って無駄に体力と筋力を消耗した……。年寄りNPですが,なぜか筋肉痛もどきはこの日の夕方から発症しており,乳酸があまりにも足りてないのではないかという疑惑とともに今日を迎えております。ただ,痛みというか脚の不調が本格化したのはなんだかんだと翌日以降ではあったので,骨まわりの痛みと筋肉痛がダブルで違うタイミングでやってきた,程度のことだろうな。

 それはさておき,途中の橋から見えたアルプスは綺麗でした。春なのがいけないのかなんなのか,若干霞がかってたのが残念。(かすみといえば,有村架純がかわいいと思う今日この頃。)

神社入口方向
(実際には左に90度折れる)
逆方向
アルプスがきれい
近くにあったお社 鳥居 潮の道史跡案内図 日曜じゃなければ
完璧なタイミングで
バスがきたのに…

 ちなみに,安曇沓掛駅の入口はかなり北寄りで,仮に力尽きずに走っても駅入口に到達できずに電車を逃すはめになっていた可能性があります。まあ,そうならなかっただけよかったと考えるべきなのかもしれないな。

駅が見えました
……入口は逆側
西山城趾というのがあるらしい
NPのようなニワカではなく,
しっかりしたお城ファンの皆様は
多数訪れておられるようです
ワンマンのご案内 運賃表
信濃大町まで200円
ゴミ箱が取り外されたようです 駅名表示

 ところで,安曇沓掛駅はいうまでもなく無人駅です。乗った電車はワンマン電車とのことなので,当然中で整理券を受け取らないといけません。整理券が必要な電車は何回も乗ってますから頭ではそんなこと分かってます。が,身体が全く分かっておらず,というかNPと一緒に沓掛から乗ったおばさまがそのまま整理券を受け取らずに着席したのに釣られて,自分も整理券を受け取ることなく席についてしまいました。そのことに気付いたのは信濃大町に降り立つ直前くらいです。まあ,普通に「沓掛から」と自己申告して200円払っておわりました。いざとなったら沓掛から乗った証拠写真を見せまくる用意はできてましたが,残念ならがこのあたりの方々は不審者NPであっても疑いの目を持って接するような悪い方々ではありませんでした。




 さて。到着が遅くなったので,自転車を借りることにします。その前に,朝食。信濃大町の駅蕎麦は非常に有名なようで,せっかくなので僕も食べてみることにしました。生蕎麦と出来合いの蕎麦があり,生蕎麦は出来るまで時間がかかるのと数十円高い値段設定となっております。いまさら数十円や数分を惜しんでも仕方がないので,生蕎麦のかき揚げ蕎麦を注文。うん,満足満足(馬鹿舌なのでカッコイイコメントを出来ない)。


 ところで,蕎麦が出来るのを街ながらいろいろ眺めていたのですが,黒部へ公共交通機関で行こうと思うと,まずは扇沢にバスで出て,そこからトロリーバスになるようです。
 黒部ダムというと,大昔ODAを囓ったときにODAで造られた国内物として名前が出ていたことと,鈴木さんの本に出てきたくらいしか知識を持ち合わせておりません。あとはここにダムを造るのは相応の損害覚悟の一大工事だったという抽象的なレベルの知識だけです。ちょっとこのあたりしっかり知識を補充して再訪したいなと思うのでありました。

 そんなこんなで,自転車を借りていざ街めぐりへ出発!歩きだったら裏道を歩いて小さな神社やお寺に逐一寄るところですが,予定より電車一本分出立が遅れていることもあるので,若一王子神社目指して一直線に大通りを進むことにします。

 一直線に,とかいいつつ,道ばたになにか発見するとすぐに寄り道してしまうのが悪い習性。道を走っていたら,右手に石の建造物が見えたので寄ってみました。
 手前側の石には「庚申塔」とあります。このあたりも庚申信仰が強いのか……。

今日の自転車
電気自転車を普通の自転車に
ダウングレードしたものでした
ここに寄り道 庚申塔の文字の上の
2つの○はなんなんだろう?
安政期につくられた石仏のようです


 さらに進むと,「大黒天」ののぼりが立っております。てなわけで,ここにも寄ってみることにしました。願わくば,進行方向から見て道の左側にイベントがあると道を渡る手間が省けて楽なのですが…。贅沢は言ってられませんな。

 まず,出迎えてくれたのが「女清水」。どうもここ大町には「男清水」と「女清水」(順不同)があるらしく,居谷里から出る水と,アルプスから出る水の2本が,それぞれ女清水と男清水と呼ばれているようです。観光マップに書かれていた解説では単に2系統あるということが書かれているのみでしたが,ここ大黒様の解説では居谷里系統の水を飲んでいた集落では女の子ばかりが,アルプス系統の水を飲んでいた集落では男の子ばかりが生まれたということが書かれております。そして,南北の道の真ん中に川を造り,両方の水を流したとのこと。まあ,話し合いでどうこうできる関係の集落同士だったらそもそも論として男女の逢瀬もあったんじゃなかろうかという疑惑もあるところで,よくある作り話なんだろうと思うのですが,それにしても2系統の水が流れているってのは面白いですね。東京にいて地下水とは縁のない生活をしていると,こういう話が非常に新鮮に思えます。

 そして,奥には大きな大黒様の石像がありました。石像というか,石の彫刻ですね。このあたりには道祖神が多数あり,この大黒様の彫刻も道祖神と似た形をしております。
 あわせて,「二十三夜塔」の石碑もあります。道祖神にしても二十三夜塔にしても,この大黒様にしても,興味深いことこの上ないところです。

女清水と男清水 女清水 大黒堂? その他の解説 摂社 石彫りの大黒様が真ん中にどどんと

 そんななか,大町に行った翌週,たまたま近所のブックオフを物色していると,穂高神社で造られたと思われる「安曇野の道祖神」という本が105円で投げ売りされておりました。普段だったらこんな本の存在に気付きもしないところですが,いかんせん大町で大量の道祖神を見た直後でしたので105円という値段にも釣られてつい買ってしまいました。最後の2枚ほど破かれていたのがちょっとあれでしたが。
 てなわけで,若一王子神社へ。
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