台湾旅行記その4

 士林駅で降りると,故宮博物院へのバス乗り場の案内図がででんと出迎えてくれます。てなわけで,バスに乗ります。
 バスは下車時に均一料金を支払うシステムのようです。EasyCardがあるので特に何も恐れる必要はありません。いやぁ,便利な世の中になったなあ。

 そんなわけで,バスに揺られて故宮博物院。土曜日なので博物院は夜間営業しております。ニワカ庭園マニアとしては,その脇にある至善園という庭園がまず気になります。で,こっちは日が落ちたら意味がないので,まず至善園を目指すことになります。
 至善園には,博物院の入場券があれば無料で入れるという情報は事前に入手しておりました。そこで,至善園脇の売店で,博物院の入場券を買えるか聞いてみたところ,無理,とのこと。仕方がないので,いったん博物院に乗り込んで入場券を購入。ついでに荷物をロッカーに入れてきました。
 それにしても,さすが台北有数の観光地だけあり,日本語が通じます(至善園は有数の観光地ではないため英語のみ)。これまで特に日本語で話していなかったため,結構な衝撃でした。

 そんなこんなで至善園。博物院の入場券を買ってきましたが,特にだれも入場券チェックをしておりません。いいのかこれで。

 さてこの至善園。解説には"traditional Chinese Garden"とありますが,ほぼ同じ民族がいる日本でさえ時代時代で庭園風景が大きく変わっているのに,異民族が入り乱れる中国でTraditionalとか言われても,いったいいつの伝統をどう取入れているのよ,という疑問になります。が,この疑問に対する回答はどこにもありませんでした(発見できてないだけの可能性もあります)。「台湾の歴史散歩」によると,「宋代や明代の庭園を復元」とのこと。宋と明って,時代的にかなり異なってますが,それでいいんでしょうか。
 とりあえず,構造としてはにほんでいうところの池泉回遊式,ということになるのかな。中国的庭園というと,自分的には西湖堤のイメージが非常に強いですが,中国においては西湖は西湖,庭園は庭園という感じなんだろうな。
 ここは8つの景勝地を取入れているとのこと。確か8は中国でも縁起のいい数字なんでしたっけ。
 あと,特に大名庭園なんかでは梅林やら藤棚やら菖蒲池やらと一部の花を推してくる構造になっておりますがここ至善園ではそこまで特定種を一カ所に集めて花見客を誘う,という構造にはなっていないように見えました。中国というと梅のイメージが強く,実際にここにも梅はあるようですが,それを強烈にプッシュして,ホームページに梅の花,みたいなこともしていない様子です。台湾って花見文化がないのかな?日本統治下に日本人向けの花見場所が出来て,そこから花見文化が生まれてても良さそうなもんだけど。

博物院全体図
日本の寺院の山門なんかにありそうな門です
かわいらしい

 ごたくはさておき,門をくぐるとまずは簡単な廊下を通って洗筆池へ,
 この屋根付廊下って日本庭園じゃ見ないですね。こういう廻廊は寺院に多いイメージ。別にこれが台湾・中国の特徴ってほどのことでもないのだろうけど。
 この洗筆池は,後漢の張芝(「ごかんのちょうし」と打ったら,後閑の長子と出た。ゆりあは長子なんだっけか)が池で筆を洗った結果,池が黒く染まったことに由来している,との公式解説があります。うむ,池が黒いから洗筆池なのだろうか。それとも,池が鏡みたいだからってことかな。気になったのは「洗筆池」で検索しても,台湾のここしか出てこないこと。宋代・明代の庭園はここにしかないんだろうか……。Googleさんが,台湾関係ばかり検索している自分のPCの空気を読んだ可能性が高そうですが,もしかしたら大陸では文革でなにか破壊されて全部消えたのかもな。
 そして,この洗筆池と繋がっているのが龍池。その右手に見えてくるのが碧橋渓の園亭。公式ページには「碧橋渓の園亭」と書かれておりますが,園内地図には「碧橋西水榭」とあります。英語訳はWest Bridge Pavilion。どうも,クローズアップされているのは橋と建物で,この池の名前は不明なままです。由来自体は南宋の呉琚(←ゴギョと読むらしい)の詩のようです。もとの詩を知らないと全く愉しめません。このあたりは教養に欠ける人間にはどうしようもないな。
 ここにあるような,かくかくしながら進む橋,日本でも浜離宮なんかにあったような記憶がありますが,これがあるとなんとなく中国っぽいですね。なんでこれを見て中国っぽく感じるのか,自分でもよく分からないところです。

廻廊 廻廊と小川 洗筆池 龍池




碧橋西水榭 鴨が2羽 橋を進む 水鳥の解説
もうちょっとでいいから予算つけて綺麗にしてほしいものです
白天鶏 鯉がたくさん 橋を進む 松風閣を臨む 逆側から

 さらに奥に進んでいきます。
 このあたりから太陽が沈んで写真が大惨事に……。でも,ここの曲水の景は非常にいい雰囲気でよかったです。
 ただ,そこかしこにある鶴のオブジェの意味がよく分からない……。

奇岩,という扱いなのかな 沿階草
日本ではジャノヒゲというらしい
現地で見たときは草が流れる雰囲気がよかったけど
写真にするとたいしたことないな
曲水の景
これは素晴らしい
岩質がいいんじゃないかと思う
熱帯感が出ててさすが台湾,
という感じの木です
台湾は亜熱帯でいいのかな?

これも王羲之と関係があるのだろうか
かごの中の鳥
背景が分からない……
(王羲之の話でいいのか?)
無教養だと辛いな
蘭亭

 で,さっきから目立って仕方がない松風閣に向かって進んでいきます。
 松風閣は,2階構造になっておりますが,1階から直接2階に上がることは出来ず,2階に上がるには外をぐるっとまわっていかないといけません。こういう構造って面白いな。
 2階部分には屏風と琴が置かれておりました。意味があるのか,単なるオブジェ的役割なのかは不明。
 また,王羲之がガチョウを自分の書と交換した逸話が像として描かれております。そもそもこの逸話を知らないので,現地では「おじさんが鳥を捕まえて役人に怒られてる図?」などと,真逆のことを考えていたりしたのでした。漢文教養と,三国志・史記がらみの知識がないと台湾・中国旅行は楽しめないな。慌てて台湾の本に数冊目を通すだけじゃだめですね。反省。

松風閣
1階は吹き抜け
別角度 2階に上がる 2階からの景色
王羲之とガチョウ
ここから外に出られる 廻廊 再度龍池
廻廊にも工夫 築山
特に取り上げられてないので,
台湾人・中華庭園的には築山はあまり重要でないのかも
龍池越しに見る
松風閣と博物院
ここが博物院側の入口
「至善園小径」と書かれてますね

 そんなわけで,初めてまともな大きさの中華庭園を巡ってみたわけでありました。一応池泉回遊式なので日本の大名庭園と比較してしまいますと,日本に比べて龍や鶴など人工物が多い印象。また,中国風=西湖堤とインプットされているため,それっぽいものが全くないのがちょっと意外。花に注目がいってないのは,観光地なのにちょっと意外。
 そういえば,日本の大名庭園だと,景色のいい場所に椅子やらなんやらがあって,いかにも「ここから眺めろ」と言わんばかりのスポットがありますがここでは椅子があってもそこは「景色がいい場所」ではなく,単なる「休憩スペース」でありました。
 あと,パンフがないんだよなー。なんでだろ。園内案内図くらいすぐに出来そうだし,予算もありそうなもんだけど。

 惜しむらくは,もうちょっと日が高いうちに到着できていれば,もうちょっと落ち着いて見学できたんだろうな。まあこれは自分の責任なのでやむなし。もともと実質2日しかない旅行だしな。

 てなわけで,ある意味この日のメインイベントが終了してしまったのでありますが,もちろん至善園に入るために博物院のチケットを買ったわけではなく,博物院それ自体にも関心はあります。よって,続けざまに博物院に向かいます。
 中は広々しております。特に事前準備なく行きました。昨年だか一昨年だかにここを訪問した僕の両親から,ここの博物館の目玉が白菜と角煮であることは聞いてたので,これがほぼすべての知識です。
 行って驚いたこと。
 1 中国のものしかない!
   日本の東博とか,大英にしてもエルミタージュにしてもメトロポリタンにしても,エジプトコーナーやらなんやら,外国からの簒奪品や寄贈品や購入品やらがありましたが,ここは100%中国でした。結局,ここは台湾が中国であることの正当性を示すための博物館なんだろうな。
 2 日本語が通じる
   上にも書きましたが,インフォメーションなんかでいきなり日本語で話しかけられました。そもそもなんで日本人だとばれたんだろうか。
 3 ゆったりしている
   もの凄い数の収蔵品があり,全部見るのに○○年,と「歩き方」にあったような覚えがあるんですが,そのわりに展示自体は非常にゆったりしていて,見やすい構造。惜しむらくはNPが陶磁器あたりの中国特産品に興味がないこと……。
 4 白菜と角煮が通路にある
   白菜については,3階に上った途端に矢印が登場して,もう博物院側も見せる気満々。てっきり奥に鎮座しているのかと思ったら,廊下部屋に展示されていてちょっとびっくりでした。しかも,角煮もすぐ近くに。これは交通整理の関係上あえてここにしてるんだろうな。

 あとは自分のメモからいくつか抜粋。完全に自分用備忘録です。
 ・ 101仏像室。銅の仏像は日本のものに近いが,明代のものになると表情・造形ともに日本で見慣れているものから離れる。手の上に子僧が乗ったものなんかは日本で見ない
 ・ チベットの仏像も興味深い。現地に行きたい。
 ・ 清の皇室の所蔵品を眺めていて,乾隆帝や康煕帝らの見知った名前を見ると懐かしくなる。
 ・ 新石器~五代の展示物には馬をつかったものが多い。やはり時代だなあ。
 ・ 硯を"inkstone"と訳して,ヨーロッパ人は理解できるのか。
 ・ 嗅ぎたばこの展示が大きい。今まで全く意識したことのない嗜好品だが,歴史的には重要な嗜好品なんだろうな。
 ・ アリクイ?のwine vesselなどがある。アリクイなんて食欲湧かない気がするのだけれど,そうでもないんだろう。
 ・ 唐突に現われる白菜は,潔白(花嫁の純血の象徴)を寓意,2匹の虫は多産の象徴とのこと。中国にも純血信仰があるんだな。これってキリスト教系の考え方だと聞いてたんだけど。
 ・ 肉形石は,表面に細かい穴を開けたり,上を赤褐色にするなど,結構人の手が入ってるんだな。てっきり天然で角煮だったのかと思ってた。
 ・ 304のオリーブの種の彫刻は,人が並んでて(数人だけど),飛ばすところだった。危ない危ない。

 その他,帰ってからいろいろネットを見ていると,実はここは非常に混雑する場所のようです。こちとら並ぶのが大っ嫌いで,オリーブの種の前に5人くらい並んでたり,白菜周りを人が囲っているだけで嫌気がさしかかってたのですが(下から見てるので3階到達時には疲れてるってのもある),昼間の混雑ぶりは到底こんなものではないようです。土曜夜というと,混んでてもおかしくなさそうな場面ですが,どうもこれはかなり空いている部類だったようです。ううむ,短気は損気,反省です。



 そんなこんなで,日本語版の図録が充実していた(多分英語版があるものはすべて日本語版があったんじゃなかろうか)のに気をよくして,図録を4冊も買ってしまいました。負担重量が……。

 ですが,せっかく士林にいるのにこのまま戻るのはあまりに勿体ないので,有名な士林夜市に行ってみることにしました。
 ……そこは,異常に混雑した,夜市でした。帰国後仕入れた情報によると,どうも士林夜市は2カ所に分かれているようですが,このときはそんなこと知りません。屋内に食堂が詰まってる夜市もあるみたいですね。行ってみたかったな。

 混雑しすぎて人に押されながら歩くので,事実上道路の右側を一方通行することになります。う~ん,凄いな。これが台北最大の夜市,しかも土曜夜の夜市か。
 適当に,肉まん12元と羊肉のチャーハン80元を買って立ち食い。最後に,蛙の卵と宣伝されているよく分からない飲み物35元を買って,帰りました。







博物院帰りのバス車内 台湾のポスト 士林夜市
とにかく混んでる!
肉まん的なもの チャーハン 蛙とはなんぞや


 この日の夜,そういえばおじいちゃんが台湾に行ってたときのことをブログに書いてたということを思いだして,ホステル(フリーwifiあり)で見てみました。すると,おじいちゃん訪問時肉まんは10元,蛙の卵は30元でした。う~ん,ただでさえ円安で損した気分になってるのに,昔から見て値上がりしてるのか……。まあ,台湾も発展中だし,値上がりはやむを得ないんだろうな。

 ところで,この日の夜,ホステルで同室に入った福岡久留米にお住まいの外人さんが異常に日本語が上手でびっくりしました。今回の旅ではほぼホステルの共用部にいなかったのですが,話した外人さんがどっちも日本語上手だったという…。あまりに唐突に日本語で話しかけられると,かえって日本語ってでてこないものですね。
その3その5

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