朝駆け笠懸

 学校の歴史の授業で「騎射三物」って習いましたね。武士の心得的なあれです。その三物とは,流鏑馬,犬追物,そして笠懸です。
 このうち,流鏑馬はあっちこっちでおこなわれております。僕は以前宇都宮二荒山神社で見ました。そして,犬追物。もう名前からして,現代でこんなことやろうものなら動物愛護団体から烈火の如く批判が集中して,弓を射ていたと思ったら集中砲火を浴びて逆に討ち死にしかねません。
 そして,残るのが笠懸です。
 この笠懸,なんなのかがいまいちよく分からんのです。なんかあちこちで調べてみたんですが,「流鏑馬より実戦的」とか,そんな言葉でごまかされます。実戦的ってのはどういうことなのか。どう実戦的になると流鏑馬が笠懸になるのか。どうも,沿革的には,昔はちゃんと懸かっていた笠を射ていたようなことをどこかで見ました。まあ,いずれにしてもWikipediaを読んだだけじゃよく分からん。

 そんな笠懸ですが,とりあえず発見できたのは三浦の道寸祭りと上賀茂神社の笠懸神事。あと,みどり市でもやっているようですが,ちょっといつどこでやってるのかよく分からず。うまく検索しないと地名が引っかかるのが困りもの。ここは桐生競艇ががんばって笠懸の宣伝をしないといけませんな。
 で,上賀茂神社は遠いし,もう「上賀茂神社」ってだけで激しい混雑が予想されるので,三浦道寸祭りに行くことにしました。これは前年から狙っていて,早々に自分のカレンダーに予定を入れていたのであります。ダービーがなんだ。笹川賞がなんだ。

 てなわけで,三浦道寸祭り。やる気のない北海道や東北の草ばんばや各地の草競馬に比べ,ここの観光協会はまともで,13時開始,14時30分ころ終了というのがきちんと明示されておりました。終わり時間が分かるのはありがたい。
 で,今回初めて三浦半島なる場所に乗り込んだんですが,驚いたのは,案外遠いってこと。確かに,よく地図を見ると,三浦半島の先端までの距離はなかなかのもので,確かにそれだけの時間がかかってしかるべきなんだけど,完全に想定外でした。まさか家から2時間以上コースとは。行きの電車は京急の2ドア車両で,京急蒲田を超えたあたりからの記憶が飛んでおり,寝落ちしました。まあ,早起き睡眠不足を少しでも解消できるのが嬉しい限りです。
 駅を出ると,油壺行きのバスにうまく接続しておりました。これは助かる。駅構内にもでかでかと「笠懸」ってあって,なかなかに地元でも盛り上がっている空気です。

 で,バスの終点油壺で下車。ここから人の流れに沿って進んでいきます。で,実は到着が12時20分すぎで,13時まで時間が無い(これでも10時前に家を出てるんだよな……)。そして,笠懸が始まるまでにやらないといけないこと,それは新井城見学です。
 道寸祭りの日に限り,14時まで普段一般人は入れない東京大学三崎臨海実験所の敷地内に入れるようなのです。急造お城マニアとしてはこれは見逃せない。ってことで,まずはそっちへ。場所は係の人に聞けば教えてくれます。そのためにいるんだから当たり前ですな。

 さて,そんなわけで東京大学三崎臨海実験所。説明係は先行しているので追いかけてくれ,ってことで向かいます。ううむ,それはいいとして,あまり城の遺構がよく分からんな……。説明に追いつきました。目の前に明らかに空堀っぽいものが広がっております。おお,素晴らしい。でも,堀の反対側に明らかに道寸祭りに向かっているっぽい人の流れがあって,この空堀自体は別に今日じゃなくても,って雰囲気。そして,解説は,城の解説というよりも三浦一族の説明をなさっております。どうも,三浦一族研究会という,なんともマニアックな研究会があるようで,三浦氏に関する民間研究が進んでいるようです。それだけ三浦一族が愛されているわけですな。後北条氏の関係者は怖くて三浦半島に立ち入れないのではなかろうか。ってことで,ボランティアガイドの方がこの研究会の方なのかは分かりませんが,これだけ三浦氏の研究が進んでいれば解説が城よりも三浦氏に寄るのは致し方ないですな。
 それにしても,空堀はいいとして,それ以外の遺構がちょっとよく分からなかったのが誠に残念……。
 そして,外に出て進むと,普段解放されている反対側からも空堀を見ることができます。ここには解説があり,それによると「関東大地震による隆起で往時の面影は薄らいでいる」とのこと。ここにくる途中にあった「引橋」っていうバス停のあたりがこの解説にいう引橋なのでしょう。とすると,かなり大規模に人を貼ってたんだろうな。まあ,そうでもなきゃ長期間北条氏と対峙できないよな。

 で,今あらためてネットを見ると,「新井城一般公開」ではなく,「新井城空堀一般公開」とありました。むむっ。そういうことだったのか。こっちの早とちりでありました。

駅にでかでか 観光案内 立派な空堀 その右手
空堀の脇なので,おそらく
なんらかの曲輪があったか
土塁があったかしたはず
奥に行くとこんな感じ
広々しておりますが,整地されただけで旧本丸等が
あったわけではなさそうです
空堀のあたりは
道も全体的に
窪んではおりました
これが旧縄張り図だと
思われます
東京大学三崎臨海実験所入口 笠懸会場入口 逆側から見る空堀と解説

 ってなわけで,慌ただしく(解説をすっ飛ばして)新井城を見終えたため,早めに笠懸会場に到達。どこで観戦するのがいいのかはよく分かりません。とりあえず昼食としてカレー。まぐろ肉が入っていて,さらにマグロカツがのるという贅沢なマグロカレーであります。

油壺湾 砂浜 海の家です カレー ゆるキャラ

 さて。食事も終えて,とりあえず目の前にある的の近くに座ることにしました。開始を待ちつつダービーを買おうと思ったら,Softbankは圏外でした。無念。まあ後で外れ馬券を買えてしまったんですがね。

 しばらくすると,時間通り,13時に始まります。まず,出場する皆さんが神事がおこなわれる中央に移動(中央部が見えないので実際にどこにおられたのかは不明)。そして,神事が執り行われます。5月ながらなかなか日差しが強く,神事が行われている間待っているのはそれなりに苦痛。当たり前ですが,神事は一般観光客向けのものではないので,待ってる身からすると何をやってるのかよく分からんのであります。これは穂高でもそうだったな。
 10数分して神事が終わり,いよいよ笠懸が始まります。
 まず,全員で馬場を歩きます。そして,的の脇に判定係?の方々が散らばります。的中したときに太鼓が鳴っていたんですが,誰がどこで判定してならしているのかちょっと不明でした。
 そして,一度各馬が馬場を走ります。返し馬的なものですね。この日は馬が5頭に射手が8名。返し馬的な試走は各馬できますが,人間は全員できるわけではないので,ここで試走できない人は大変だろうなあ。

待機する馬たち 出番を待つ的 神事へ向かいます 神事
お祓い 戻ります コースを歩きます
的の横に待機 試走(正式名称忘れた) 歩いて戻ってきます 真ん中で頭を下げます

 さて。笠懸は1の組と2の組,4人と4人に分かれておこなわれます。最初にやる人と最後にやる人には特別な名前をついております。この書きぶりから明らかなとおり,名称忘れました。最初と最後は優秀な射手さんがやることとなるようで(そりゃそうだろうな),女性が最初を務めるのは初めてとのことでした。いろんなサイトで笠懸の写真を見ていると,この最初の女性の姿をよくお見かけしますので,かなり経験豊富な方なのだろうとお見受けいたします。
 これ,最初の人がいきなり失敗するとかなり場の空気が悪くなると思うので,最初の人にかかるプレッシャー半端ないだろうな……。

 てことで,扇が返って(なお,扇係の人との連絡はインカムを使うというハイテクっぷりなのがナイス)始まります。特にホラ貝とか太鼓とかで開幕を盛り上げたりはしません。
 そして……いきなり一の的・二の的的中であります。ほんと凄いな。NPみたいなアホが余計な心配するだけ失礼ってなもんですな。

 で,まず一の組の4名が2つの的を射ていき,4頭全てが終えると今度は三の的・四の的を射ることになります。この三の的・四の的がくせ者で,三の的は右下,四の的は左下に位置しております。そもそも狙いにくい位置な上に,右下を射たあと反対に弓矢を向けねばならないというかなり大変な作業をおこなわねばなりません。これは大変。このあたりが,「笠懸が実戦的」といわれる所以なのでありましょう。ということで,「こういう難しい位置を狙うのが笠懸である」と勝手に思い込むことにしました。

 そして,とりあえず見ていたところ,三の的・四の的を両方とも的中できた人はいなかったように記憶しております。やっぱり難しいんだろうな……。しかも,ここって馬場がまっすぐでなく湾曲しているので,遠心力も考えて馬上で姿勢保たなきゃいかんのだもんな……。ようやりますわ。

 そんなわけで位置の組の演技が終了。そして,二の組が続きます。
 二の組の演技が終わると人がはけます。時間的にも14時30分前で,確かに終了のお時間。僕もこの日,16時から品川で用事があったので,あまりのんびりしてられない……。

 ってことで,ふらふら歩いて馬を眺めていると……また演技が始まりました。あれれ,なんだなんだ。なにが起きている!?
 どうも,1回目の演技で成績がよかった5名がさらに次の演技に進むみたいです。時間的余裕があったらこれももちろん見て行きたかったんですが(なんせ人がはけているので見やすいし写真も撮りやすい。そういえば,開始前に「前の奴は座れ」的なトラブルでちょっと観客側の空気が悪くなりました。こういうトラブルは競輪場だけにしてもらいたいですな),16時品川に間に合わせるためにはこれで帰らざるを得ない……。無念。
 ここではないですが,上賀茂神社の笠懸神事を見た方のサイトを見ると,最後は小さい的に変わって一等賞を決めるようです。この道寸祭りでもそこまでやるのかは不明ですが……。ここまで見たかったな。また来たい。また来よう。


 さて。そんなわけで戻るわけですが……三浦市はこんなイベントの終了時にもかかわらず臨時バスを用意しておらず,バスに大行列ができておりました。初めての開催でもあるまいに,三浦市としてはもうちょっと頑張った方がいいんじゃなかろうか。まあ,これも含めて最後まで時間的余裕を持ってゆっくり演技を見てから帰りたかったな。
 なお,バス待ち問題もあって16時品川は30分遅刻。なにやってんだか……。


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