ライスシャワー

430kgの精神力

 僕が競馬を始めたのは(馬券を買い始めたのは、ではない)、あまりよく覚えていないが、おそらくトウカイテイオーの有馬記念あたりからだろう(あれから4年、こんなにはまるとは…)。そんな初心者が、いくらクラシック2勝馬とはいえ、日経賞2着のあと骨折して、ビワハヤヒデをホッとさせた馬のことなど、知るはずが無い。
 まあ、この春はナムラコクオーで打倒ナリタブライアンに燃えていて、ライスシャワーの名すら知らなかった。
秋になって、ライスシャワー帰厩(これも知らなかった)。秋は、ノーザンポラリスでナリタブライアン三冠阻止の予定が崩れ、失意の中、有馬を迎えた。
 ナリタブライアンを極端に嫌う者(ひねくれ者ともいう)にとって、有馬記念はやばいレースであった。ろくな馬がいないのだ。はっきりいって、9ヶ月ぶり、しかも、1年以上勝ってない馬が4番人気になるか?まあ、筆者も推してたから偉そうなことは言えんが。まあ、ここで目をつけたのが、全ての(人生の破滅への)第一歩であった。
 有馬記念はナイスネイチャの連続3着記録をぶち壊すのにとどまったが、急仕上げ(本来はAJCCから始動の予定だったが、「GT馬なんだから、GTを使おう!!」ってことで有馬からとなった)の割りによくやった。7ヶ月半ぶりで12着に負けたナルタなんちゃらとは訳が違う。
その後、ライスは京都記念、日経賞と惨敗して、ファンの数は激減するが、僕はそれに反比例するかのように、ライスにのめり込んでいった。「所詮はダービー16番人気」と言った故O川K次郎とも決別した。
 結局、ナリタブライアンは敵前逃亡して、再戦はならなかったが、たとえブライアンが出ていても、ライスが勝っただろう。'96阪神大賞典のラスと1ハロンは、この天皇賞のラスト1ハロンと、なんと0.1秒しか違わない。阪神には、最後に坂があるが、この日の京都は重馬場、しかも、ライスはあの3コーナーの坂で仕掛けているのだ。
 僕は、宝塚でも、自信を持ってライスを本命にした。その場にいれば1番人気確実の、ミホノブルボンに、わずか1 1/4馬身差にまで詰め寄ったコース。負けるはずがない…。

 ご存知の通り、ライスはチビだ。最初の天皇賞の時など、極限の仕上げで、何と430kg。天皇賞最軽量優勝馬は、428kgのトウメイだが、トウメイは牝馬で、しかも、勝ったのは秋なので、ライスシャワーは、天皇賞最軽量優勝牡馬で、天皇賞(春)最軽量優勝馬ってことになる。
 ライスは430kg。斤量は58kgだから、斤量は馬体重の13.5%にあたる。一方、マックは11.6%。で、430×11.6=49.9。ライスとマックには、8kgの斤量差があったって計算になる。このことからも、天皇賞において、マックの方が有利だった、ってことは分かる。まあかなりむちゃな計算だけど。
 そんなチビ馬が、いかにしてクラシック3勝もしたのか。おそらく、ライスの430kgの中には、精神力がつまっていたのだろう。本来は重馬場が苦手で、斤量にも敏感な馬が、重馬場58kgの春天を制したのは、その精神力の賜物だろう。
 力が落ちた馬はGUまでしか勝てない。力が落ちてもGTを勝つには、並外れた精神力が必要になる。79年のグリーングラスの有馬、90年のオグリキャップの有馬にしてもそうだ。(この3レースの2着馬を見れば分かるだろう)
 ライスは、成績に安定の無い馬だった。重賞はたったの4勝。しかし、ライスの距離適正は3000m以上。2400m位のレースに負けても、文句を言われる筋合いはない。最初の春天の調子だったら、秋天どころか、スプリンターズSだって勝つだろうが。ニホンピロウィナーが皐月賞ビリでも、誰も彼がザコだとは言わない。サクラバクシンオーだって、1600m以上じゃ散々な成績だ。しかし、誰もバクシンオーが弱いなんて言わない。
 マックイーンにつけた2 1/2差。あの差は、永遠に縮まらない。そもそも、叩き合いに弱いマックイーンが、長距離でライスに勝とうとする方が無理なのだ。ビワにしたって同じ事。もし、ライスがいたら、マックと同じように差されてただろう。
 430kgの精神力。メジロマックイーンを完全に叩きのめし、ミホノブルボンの三冠を阻止。そして、いずれもレコードタイム。そんじょそこらの馬にできる芸当ではない。
 もう一回、マックを破った春天の時の状態で走らせてみたかった。

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