レジェンドとの一期一会〜福田正博引退試合〜

1.サッカーは楽しい!これからがキックオフ(2003年3月開催)

 東京育ちの自分がなにゆえ浦和サポをやっているのか。たびたび聞かれる質問ですが,基本的な答えは「当時東京にJリーグのチームがなかった。そして福田が好きだった」ということになります。ついでにもう少し加えると,中学生だった自分が最初に親に作ってもらった銀行口座が三菱銀行のもので,もともと三菱というグループが好きだった,というのもあります。

 さて,そんな自分ですが,真面目な中学生・真面目な高校生・真面目な浪人生であるところの自分が,部活やって競馬やって,さらにサッカーも,なんてのは無理でした。そりゃあ,サッカー見に行くくらいなら競馬を見に行ってしまうわけでして,やはり短い人生,優先順位をつけていくと,当時の自分にとってどうしてもサッカーというのは複勝圏には入ってもなかなか頭にはこなかったのであります。
 てなわけでして,福田が好きだのなんだの言ったところで,所詮テレビのダイジェストで見るのが関の山。テレビ埼玉が映るわけでもなく,埼玉新聞を読むでもなく,もちろん浦和競馬場でサッカーをやってくれるわけでもなく,浦和レッズの試合もほとんど生観戦歴などなかったのであります。てことで,自分はまさしくにわかオブにわか。ぶっちゃけ,駒場は1回しか行ったことがありません。まあその試合自体は浦和が清水を6-1という歴史的大差で下したこの年のナビスコ準決勝でして,観戦運は実は悪くないのです。

 そんなにわかですが,福田が引退するとなると,突然慌てだします。廃止が決まった途端に競馬場に行きたくなるやつですね。葬式鉄とかと同じ発想です。慌てて埼スタに試合を見に行ったり(現役最後の試合は生観戦),果ては大原にも行ったりしました。結局サインはゲットできず。

 で,にわかにもチャンスは訪れます。2003年,ワールドカップを終えて各地のワールドカップ規格のスタジアムがお荷物となる中,2003年3月9日埼玉スタジアムでは「サッカーは楽しい!これからがキックオフ」というイベントが開かれ,そこに現役を引退したばかりの福田さんも登場するというのです。これは行かないわけにはいきません。というわけで,申し込んだところ無事当選。試合をやってる埼スタ自体にほとんど行ったことがないくせに,こんなときだけ埼スタに乗り込むのでありました。

浦和美園駅 埼スタへの道。この時点ではほどんど埼スタに行ったことがなかったから,うれしそうにこんなのを撮っている 埼スタ

 で,当然ですが,内容は覚えていません。多分サッカーは健康にもいいしこれからもJリーグを盛り上げてサッカー場を有効活用しましょう,という感じの綺麗事で終わったんじゃないかと思います(←覚えてないなら適当なことを書くな,と言われそうだ)。こっちは生の福田さんを見られて興奮してただけであります。
 なお,主として話しておられたのは今は亡き長沼さんです。世代が違いすぎて,長沼さんの偉大さについてはよく理解しておりませぬ……。

 そして,その後はスタジアムツアーです。埼スタ内部をしっかり見るのは当然初めてです。最後はピッチサイドに出て,記念撮影。
 いろいろ盛りだくさんのイベントで,今だったらもうちょっときちんと記録を残すんですが,残念ながら当時の自分の能力ではこれが限界でした。
 限界は限界としても,当時の自分,福田さんに会いに行ったのであって写真撮りに行ったわけではないとしても,いくらなんでも写真下手すぎじゃありませんかね。

入場。ピントから何から全部ダメ これが限界 退場。写真はダメダメでした
通路 多分,貴賓室 ロッカールーム ロッカールームの床
こういう写真はこの時代から好きだったんだな
マッサージ室 アップのためのスペース
ワールドカップの記録 懐かしの日本ベルギー戦 解説中 上からここに降りてくる いざピッチへ!
埼スタの芝 客席 ここから出てきた ビジョン
座席 メインの椅子 偉い人のためのスペース あらためて正面を 撮影待ちの皆様 こんな感じに記念撮影

2.福田正博引退試合

 さて。続いて2003年6月15日。ついにこの日がやってきました。福田正博引退試合。
 アウェイサポがいない,レッズサポで埋め尽くされた,まさに真っ赤っかなスタンドです。そのうちの1人が私です。ここにいられる幸せ。生きててよかった。

 そして,練習開始。これを書くまで完全に忘れてました。この日,小野伸二が用具係として参加していたのです。というか,用具係としてしか参加できなかったのです。
 これ,今(2019年)になってあらためてこの日の出場選手や試合経過を確認しようと思い,適宜検索かけてるんですが,引退試合のオフィシャルな結果って全然見つからないんだな。多分この日の主催は浦和レッズだったんじゃないかと思うんですが,公式記録をネットにアップしてないのだろうか。当日の記録は,し合いから15年以上たって今なお残る一部のファンサイトには記録されてますが(今回拝見したのはこちらこちら),infoseek,Geocities,niftyなどのサイトが無くなっていく中,オフィシャルに残るのがこれだけというのはちょっと悲しい。
 出場メンバーを見ていると,昨年の平川の引退で,この試合を知る選手は現役の浦和にはいなくなったんだな。そして,あれだけ怪我に泣かされた田中達也が今なお現役というのが逆にすごい。

 そして,同じく悲しいのが自分の写真撮影能力のなさ。興奮してたのを差し引いても,あまりにも酷いな。

埼スタへの道 メイン
選手が出てきました 福田 伸二 肝心のボールが写ってない

 さて。試合は,というと,いいですね,こういう花試合。バインですよバイン。ウーベからの福田。ほとんど浦和の試合を生観戦したことのない自分のような人間にとって,これを見られたのは本当によかった。
 そして,やはり気になるのは福田のゴール。審判が空気を読んでどこかでPKとるんじゃないかと思ってたらそういうことはなく(今の浦和なら槙野なり森脇なりがやるだろうけど),このままゴール無しか……と思っていたら,まさかのヘディングゴール。おおおお。すげぇぇぇ。やっぱり持ってる人は持ってる。さすが大将。そして,福田の最後のゴール(なのかどうかは特に確認してないけど)を見られたのは本当によかった。いい試合でした!!

 試合後は,福田がスタジアムを1周。そして,話題になった空に浮かんでいくスパイク。


 福田という選手は,ドーハで期待されて,期待された結果を残せず,他方でかなり長い間「ブラジルから点を取った唯一の日本人」という称号を持ってたり,もちろん日本人初のJ得点王だったりもしていてそりゃ5万以上集めるだけの選手です。とはいえ「負けないよ」,今も笑い話として語り継がれる初ゴール,他方でクラブタイトルを取れなかったこと,あの世界一悲しいと言われたVゴールなどなど,なんというか悲劇性と喜劇性をあわせもった,単なるレジェンドプレイヤーを超えたなんとも愛すべきキャラだったと思うのであります。自分自身ロッテの黒木みたいな,こういうタイプの選手が大好きなこともあり,福田選手に出会え,福田選手を応援し,そして福田選手の引退に間に合ったこと,この場にいられたことは,本当に自分の人生にとって(大げさでなく)本当に大きなことでした。
 まあ,この時点からすでに15年が経っていて,このころは「いつか大将も浦和の監督としてタイトルを」などと思ってたのが嘘のような状況でありますが,それもまた時代の流れ。このころはまさか鹿島からやってくる興梠が浦和の大エースとして福田のゴール記録を抜いて福田が1日店長やるなんて夢にも思わなかったわけでして,ほんとサッカーって分からんですよね。
 15年もたつと,おそらく浦和のゴール裏の若い皆様は福田なんて歴史上の人物だったりするんでしょうし,過去にこだわることがクラブにとっていいことだとも思わないんですが,それでもやっぱり自分は福田でJに入り,福田で浦和に出会い,福田を追いかけてここまできた人間なので,今もなお,いつか福田さんとタイトルをとりたいと願っているのであります。



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