穂高神社御船祭り

 長野県には草競馬が4カ所で年4回開かれているとされています。とりあえず自分が知る限りでは年4回,4カ所です。そして,これまで大町・高ボッチ・望月の3カ所には行ったことがあるので,残るは安曇野草競馬です。で,せっかく安曇野まで行くのでついでに何かないかな,と調べたところ,丁度タイミングよく前日に穂高神社で御船祭りというお祭りが行われることが判明しました。安曇野自体は多くの山を抱えていくらでも外から観光客を呼べる場所のようなので,草競馬と御船まつりが並んでいるのは単なる偶然だと思われます。でも,こんな偶然,利用しないわけにはいきませんな。

 というわけで,高速バスで安曇野に乗り込もうとしたところ,小仏トンネル付近で事故渋滞がおきていて,2時間程度遅れての到着。本当はお祭りの前にもうちょっといくつかまわる予定だったのですが,残念ながら初日はお祭りだけで時間いっぱいです。

 バスは穂高神社の近くに停まってくれるので助かります。予想に反して,ここで降りたのは数人。御船祭り目当ての人は案外少ないのかな?まあその方がすいてていいか。

 と思ったのもつかの間,やっぱり神社まわりにはたくさん人がいました。もちろん,普段の穂高神社を知りませんので,これがいつもと同じなのか祭りだから多いのかは分かりません。

 ごたくはさておき,中に入っていきます。拝殿前のスペースに神楽殿があり,その前に人だかり。なるほど,おそらくこのあたりでお祭りの本番が行われるんだな,と目星をつけます。そして,人の流れに乗ってさらに奥へ進みます。すると,おそらくこのあとの御船祭りに出てくるのであろう船がスタンバイしておりました。





安曇野の銘水 境内案内 健康長寿道祖神 鳥居 拝殿 神楽殿 お祭り用の?提灯

 あとで分かったことも含めて今書いてしまいますと,船は全部で5隻。うち3隻は子供船で,残り2隻が大人船。そして,実際に激突するのは大人船2隻だけです。
 そして,この船,前部が男腹,後部が女腹になっております。なるほど,男腹と女腹がぶつかるわけですな。何を意味してるのか丸わかりです。そして,男腹には男の,女腹には女の衣服が掛けられております。

 そして,船には過去の歴史の名シーンを再現した人形が飾られております。この日飾られていたのは,
・ 大江山の酒呑童子を退治する源頼光
・ 佐藤継信の最期
・ 高松城の水攻め
・ 山崎の合戦明智光秀の最期
・ 平賀源内
の5つ。なお,平賀源内だけ解説を撮り損ねましたが,取り損ねてることそれ自体に今気付いているくらいなので,特に他意はありません。というか,他意があるとすれば,佐藤継信の最期です。これ,タイムリーなことにここを訪れた頃にちょうど大河ドラマの義経をレンタルして見まくっておりまして,おかげでこの「佐藤継信の最期」という,平家物語で有名なこのワンシーンのことを知っておりました。いやぁ,持つべきは歴史知識です。もちろん,原典とは言わないまでも吉川英治版のでもいいから平家物語を読んだ方がいいんだろうけれど。それにしても,継信の最期ってここで取り上げられるレベルの著名シーンだったってことをここにきて認識しました。

船の展示 酒呑童子と頼光 継信の最期
高松城の水攻め 山崎の合戦 平賀源内

 さて,拝殿前に戻ると,太鼓の奉納。
 そしてそれが終わるといよいよお祭りの開始です。もちろん,お祭りはあくまで神様に対して行うものであり,観光客は船のところだけ見られればおなかいっぱいですが,お祭りはそれだけではダメです。てことで,神主さんの入場から,開扉の儀,神饌のお供え,祝詞奏上,玉串奉納等が粛々と,厳粛に執り行われていきます。
 一応,どのような儀式を行っているかはスピーカーで聞こえてくるんですが,行われている場所が本殿で,まあぶっちゃけみんな本殿に背を向けてますから,何をやってるかよく分かりません。そして,こうした儀式が行われている間,裏からは船を動かす声と音が聞こえてきます。「そーれ」くらいだったらまあ別にいいと思うんだけれど,太鼓叩いてる音も聞こえてきます。さすがに儀式の邪魔じゃなかろうか。
 そういえば,気付いた範囲で立正佼成会から玉串が出てました。そういうことする宗教なんすね。

 そんなこんなで,式典自体は15時10分ころに始まり,粛々と儀式が進んで16時ころになりました。信仰心ゼロのNPは(本当は観客全体に一般化したかったのですが,勝手に一般化すると怒られそうだからやめた)疲れてきました。まだかー。
 そして,各摂社末社の旗を持った氏子さん?たちが入場。先頭を飾る旗は小笠原家から大庄屋の茅野家にわたったものとのことです。そして,危険なのでみんな立つように指示が出ます。お,いよいよ開始だな!(注:お祭り自体はもっと前から始まってることは重々承知してます)

太鼓の奉納 神職さん登場 氏子さん入場して整列
某運動会を思い出しますね
小笠原の旗

 そして,いよいよ船の入場です。
 まずは子供船から。子供船といっても,子どもだけで引っ張るわけではなく,大人も連れ添って引っ張ります。
 そして,曲がるときが大変そう。大人が一生懸命方向転換します。


入場!

上で笛を吹いております

頑張れ大人

この段差がきつい

あれ,口から笛を離してるぞ

 そんなわけで,子供船は場内を3周して外に出て行きます。あくまで神様に姿をお見せするだけ,ってことでしょうかね。

 そして,引き続き大人船が入場します。大人船はおそらくぶつかったときに飛んだり引っかかったりするのを防ぐためでしょうか,前後についていた衣服がなくなり,木組みだけで中が見えるようになっております。
 そして,中にも楽隊がいることが判明。これで謎が解けた。実はさっきの子供船,がたがたしたときに上に乗ってる人たちが「こんなん無理〜」とばかりに笛を吹くことを放棄してる場面があったんですね。でも音楽は流れ続けてます。そして,よく聞けば音楽は中から聞こえてきてます。てことで,性根の腐ったNPは,中でCDでも流してるんじゃないかと疑ってかかっていたのです(考えてみたら,CDこそ揺れに弱い)。神様の前でそんなつまらないことをするはずがなく,中にも笛を吹いている人がいたんですね。なるほど。

 さて,継信の大人船が入場し,2周ちょっと進んだところで止まります。そして,もう1隻入場してきます。おお!

 そして,正面と正面を確認して……ぶつかります!
 これ,自分の拙い文章力じゃ全然この激突のすばらしさを伝えられません。素晴らしいです。何が素晴らしいって,ぶつかるその直前まで双方笛を吹いてるんですね。そして,激突すると一瞬静寂が訪れます。そして,静寂を破るように太鼓が鳴ります。そして,ギシギシという音ともに太鼓と笛の音が響くのです。ほんと,文字で書いてて悲しくなるくらい現場の不思議な雰囲気が出てきませんな。
 これですね,当初自分が思い描いていた「船が激突するお祭り」という勇壮なイメージ(それこそ某運動会の立ち会いのイメージ)とはまたひと味もふた味も違っていて,優美な雰囲気も含んだ,まさに男と女双方の雰囲気の入った激突です。これはほんと文字面だけじゃ分からん。ナマで見られてよかった。

 船は,1カ所で4回ぶつかったあと,逆側でも3回程度ぶつかり合い,最初にまわった船はそのまま外へ。もう1隻はほかの船同様あと2周して外に出て行きました。
 この流れからも明らかなとおり,勝敗を決めるようなことはしません。ぶつかった直後は上に乗ってる人が握手したりしてたし。


大人船はまわるの大変そう

スタンバイ

もう1隻登場

 お祭り自体は,最初の4回のぶつかり合いが終わると一気にグダグダになります。逆側でも再度ぶつかり合いがあると分かると,そっちに向かって駆け出す人もいれば,もう満足したとばかりに立ち去る人もいます。などと,さも自分が最後までしっかり見ていたかのように書いてますが,自分も目の前でぶつかり合いを見られたので満足して外に出ました。

 で,いくつか神社のもろもろを拝見。

御由緒 狛犬 出てきた
一歩間違ったらぶつかって
大惨事になるだろうから,
ここを通すのも大変だ……
継信の首がとれてる……
御船 神厩舎と御神馬
たしかに馬装をした御神馬って珍しい気がする
鳥居
   
市文化財の御神橋 塩の道と道祖神 二十三夜塔 道祖神
  
道祖神 餅つき道祖神

 で,神社をあとにして,しなの庵で自転車を借りてこの日の宿に向かいます。宿は前日とったユースホステル。日本でユースに泊まるのは白馬北海道遠征の新冠ファンホース以来。ためしにファンホースの現状を調べてみたら,閉館しておりました(公式Wikipedia)。衝撃。

 自転車は普通の自転車と,電動自転車を選ぶことができ,しかも夜の間に電動自転車の電池交換サービスがあったりとなんか安曇野はとんでもなく自転車事情が発達しているようであります。で,お馬鹿NPはここで無駄な見栄を張って伝道でなく普通の自転車をレンタル。なお,ユースホステルにはほかにもここで自転車を借りておられた方がおられましたが,皆様電動自転車を借りておられました。そりゃそうだよな……。
 なお,ユースホステルまでの上り坂は正直たいしたことはなくて,この日は「別に普通の自転車でいいじゃないか」と思っていたのでした……。ちなみに,途中のセブンに立ち寄りましたが,自転車を借りてから到着まで30分程度でした。

 あと,ユースでびっくりしたのは,草競馬に行く人が皆無だったこと。あれれ。草競馬に行く人だらけで,競馬トークが飛び交うもんだと思ってたんだが。そういえば,ユースに着いたときに自動車を洗車している方がおられまして,「ペアレントの方が夕食準備時間に洗車するのも違和感あるし,かといって旅行先で洗車なんてしないよなあ」とか思ってたら,どうも今般の御嶽山の噴火で火山灰をかぶったとのことでした。東京にいたら完全にテレビの中の出来事だったんでしょうが,こうしてニアミスしておられる方を見ると,ほんと世の中どこでどういう災害に遭うか分からないな,と思います。

今回の自転車 最後の曲がり角 部屋

 てことで,就寝。


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