ボートレース in England〜ヘンリーロイヤルレガッタ

 ボートレースというと,某中学と某高校の皆様におかれましては,入学早々集団拉致されてみんなそろって応援させられるという思い出深いものを思い浮かべ,それ以外の皆様におかれましては競艇の新しい名前としてインプットされているものと思われます。
 で,イギリスにおいてはボートレースはWikipediaさん(このボートレースには"THE"がついている)によると一義的にはケンブリッジとオクスフォードの対抗戦を意味するようです。日本で最も歴史のあるレースよりも100年歴史が古いわけで,天皇賞(エンペラーズカップ)とゴールドカップの関係に近いですな。

 さて,今回訪れたのは両校の対抗戦ではなく,ヘンリーロイヤルレガッタというやつです。ボート競技への認知度が低すぎて,日本語のWikipedia記事は2016年7月時点で5文しかないという非常に簡素なものとなっておりますが,英語版は詳細な記事となっております。英語は読む気がしないので(英語なのに加えて長いから),日本語だけの情報に頼りますと,とにかくロイヤルアスコット,ウィンブルドン,ゴルフ全英オープンと並んでイギリスの夏の風物詩となっているようです。F1は含まれないんですな。このうち,全英オープンはもうすぐスコットランドがイギリスから独立するのでイギリスの風物詩ではなくなりますので(まさかスコットランド発祥のモノを全英オープンと言い張ってスコットランドを排除して続けないだろうな),今回NPはイギリスの夏の風物詩を制覇したことになります。いやあめでたい。というわけで,スコットランドはきちんとイギリスから独立してください。

 さて,今回観戦に行くことになったのは,某会でお誘いを受けたからです。
 そして,直前までアイルランドでふらふらしたり,その前はフランスをふらふらしたり,もちろんウィンブルドンやアスコットでふらふらしたりもしていたので,事前知識ほぼ。全ての知識は日本語版Wikipediaから得ておりました。あとは会の方の指示に従うのみ。

 指定された会場は,ヘンリービジネススクールという場所でした。ここから観戦するわけですね。で,私はGoogleに汚染されたアホゆえ完全に騙されていたのですが,GoogleMapさんが我が家から指示したのはReadingから800番のバスに乗ること。実はこれは罠でして,正解はReadingから乗り換えてTwyford→Henley-on−Thamesと行き,ここから向かう方法です。これを知ったのは前日か前々日,車への同乗のお誘いをお断りする際に,最寄り駅がHenley-on−Thamesであること,そしてこの駅から会場まで徒歩30分程度であることを認知した際でした。まったく,ちゃんと調べないとダメですな。
 そして,完全に受動態な人間ゆえ,この「会場」がどういう場所であるかは現地に到達するまで分かってなかったのでした……。

Twyford
Henley線への乗換口
Twyfordには
競馬場でよく見る
紳士淑女の格好をした皆様が
たくさんおられます
Henley-on−Thames到着
ホームにはユニオンジャック
もうすぐスコットランド部分が
なくなるわけですな
Winning crews pull together
(写真は帰宅時に撮ったもの)
ヘンリーオンテムズ駅
Welcome to the home of Royal Regatta
完全にレガッタのための駅ですな

 で,この時点では,「あとは会場まで人の流れを追いかければ着くだろう,なんせこれだけ人がいるんだからな」と,安心しきっておりました。まあ,GoogleMapさんを頼れば道に迷うこともない。徒歩30分なので,どう渋滞に巻き込まれるか分からないバスよりも確実です。なんせまだ1時間近くある(本当はもう1本早い電車で着いて,River&RowingMuseumに行きたかったのだけれど,そこまで早起きできるはずもなく)。
 途中,川沿いに出て,最後まで川沿いを歩ける道があるのかな,と思ったのですが,そんなはずもなく,やはり大通り沿いを歩くことになります。橋を渡って反対側に向かう人も多いです。そして……
 気付いたら僕だけでした。そして誰もいなくなったinイギリス。いや,クリスティのそして誰もいなくなったもイギリスの話か。

 そして……誰もいなくなるだけならいいのですが,恐れていたことがおきました。……歩道が消えた。キルベガンアゲイン。

 いやはや,死ぬかと思いました。途中,遅刻を承知でバス停で待とうかとも思ったんですが,ほかの方々に自力で余裕ですと大見得を切った以上,いつくるか分からないバスなんかに頼れない。と思ってバス停を越えた数分後にバスに追い抜かれるという,ありがちな展開。

駅正面のホテル
Imperial Hotelと名前がついてますが
由緒が正しいのでしょうか
川から見えた橋
橋は絵になっていいですね
(あとでこの橋まで行くとはこのときは知らなかった)
渋滞している街中の様子 最初は歩道があった
逆側にうつったけれど
(この歩道の扱いの不安定さで
若干不安にはなっていたけど)
まだ歩道がある
ここで歩道が消えた
前方に人が歩いているので
安心していたら,
草刈りしてる地元の人で
観客ではなかった……
馬と鹿に注意
つまり,NPのような
馬鹿な歩行者に注意しろ
ということであります
近づきました
右手に駐車場
草の上を歩けるので
このあたりは安全
案内板

 というわけで,精神的に疲弊。肉体的にも,歩道が全くない箇所は走り抜けないといけないし,車の音がしたら先に行かせるために草むらに身を隠して車が過ぎるのを待たないといけないしで,ストップアンドランを繰り返して疲労。つまらない見栄を張ったうえにバスを信じられなかったために酷い目に遭った。反省。

 さて。中に入りますと,そこにはホワイトハウス(白い家なんだから間違ってないだろう)と,きれいな芝。皆さんピクニックしておられます。そして,想像した以上に人が少ない。
 そして,皆様と合流。約10ヶ月ぶりくらいにおにぎりをごちそうになり,約10ヶ月ぶりくらいに唐揚げをごちそうになり,なにより約10ヶ月ぶりくらいに梅干しを食べました。感謝感謝であります。

 で。ここで今回のイベントの内容が分かりました(ちゃんと事前に連絡を読んでいれば分かっていたのですが)。
 このビジネススクールの卒業生及びその知り合い向けに学校の庭が開放されている。この場所はスタート地点よりもやや上流にあり,ここから船に乗ってレガッタ観戦に向かうことができる。
 というわけであります。

 で,まずはしばし休憩しながら船の出発を待ちます。大学のイベントということですが,楽団による演奏もあったりして,このあたりはさすがイギリスって感じですな。

ホワイトハウス
これが校舎らしい。多分貴族の家かマナーハウスかを
買い取って改造したんでしょうね
芝生の庭 子供用スペース 楽団

 続いて,時間になったので船に乗り込みます。
 船は上流に向かい,橋を越えて折り返す,というルートをたどります。そして,その橋とは……行きがけに見た,あの橋です。
 つまり,船は,僕が歩いてきた距離を上り,そして下って戻っていくのです。この船に乗っている中でこの距離感をしっかり分かっている人物,つまり橋からここまで歩いた人物は僕だけでしょう。はっはっは。

 レガッタについての事前知識が皆無すぎるのですが,とりあえずのWikipedia知識だけでも,単純に最初にゴールした方が勝ちというルールではないようで,途中のチェックポイントのタイムなども要素になっているとのこと。自転車競技とも親和性があるわけですな。そのためか,道中,ハロン棒ならぬマイル棒があり,そこに審判員というか記録員がいたりします。
 川は流れと平行に3区画に区切られていて,観客(我々を含む)が通航できるのは上流に向かって右側,つまり左岸側。真ん中と右岸側の取り扱いはちょっとよく分からないのですが,見たところ,どっちもレースに使っているようでした。ですが,レースは完全セパレートコースで片方が右・片方が真ん中,というわけではなさそうでした。まあ,斜行なんてして勝てる競技ではないでしょうし,多分そんなことしたら失格になるんでしょうが。審判艇は競技艇の後ろから追いかけており,モーター付きです。楽でいいですね。
 競技は右岸側でおこなわれるために,観客を乗せた船に視界を遮られない右岸側に観客席が集中しています。ゴール付近はメンバー席,そこから遠ざかるにつれて入場料が下がっていくという流れは競馬場と同じです。ただ,競馬場はグランドスタンドの客もゴール付近まで到達できるのが通例なのにここはダメなので,競馬以上に階級社会だといえるかもしれません。
 われわれと同じように船で観戦する人も多数おられます。メンバー席から観戦するよりも,船から見た方が近づけるし雰囲気もあるし,よっぽどかマシだと思うのですが,この船に乗れるのがどういう人でその料金がいくらかなのはとりあえず検索しないと分かりませんし,検索する気力はございません。途中の島にも観客がいたりするのがいいですね。
 まあ,とはいえ,競馬場と同様に皆さん基本的に飲んだくれていて,多分レースそれ自体にはそんなに興味がないのでしょう。これぞイギリス。
 船には見ての通り2本のポールがついています。これは蒸気船の煙突ではなく,単なる飾りでして,橋をくぐるときは邪魔になるので前に倒します。また,橋をくぐる際は危ないので上部甲板にいる観客も全員船内に戻らなくてはいけません。ちょっと面倒。船にこんな飾りがついているのは,おそらく船名のNew Orleansに関係していて,ミシシッピ川のクルーズ船を意識しているのでしょう。船の後部には水車もついておりました。
 それにしても,橋を過ぎた地点まで船で進んで思うのは…よくぞこの距離を歩いたな,ということであります。よくやった,俺。

乗船券 船上の様子 船から大学の庭を見下ろす
鴨?が列を作って泳いでおりました
ここまでの量はなかなか見ないですね
これは多分練習中の船
奥にヘリコプターが見えます
この国の金持ちはやっぱりヘリ移動するんですね
スタート地点 これも練習中
フランスチームなのでしょうか
先ほどスタートした両チーム。速い!!
こんな感じで飾りを倒す
(これは木に引っかかるのを防ぐために倒したもの)
反対側やコースはこんな感じ 3/4マイル地点
遠くから両艇やってきて 最後に審判艇が競走艇を追いかける 1マイル
    
こんな感じに皆様船を出して観戦されております。いろいろな船があって興味深いですな。

車道からそのまま
川に入れる水陸両用車

スタンド

教会が見えてきた
街(ゴール)が近い

こっちは屋根付きスタンド
 
このあたりの家は船着き場附属です

みんな下に降りてきた
満員です

ここにも鴨

外をチェックする船員
(僕には船長かどうかの
判別能力はない)

Uターン中

よく分からんけど
女性が一人船から離脱
こうやって帰ると楽に帰れるなあ
   
橋をくぐる
  
橋を抜けたのでまた上に出ました。橋に別れを告げます

コースを正面から
多分これがゴール地点(具体的にどこがラインなのかはっきりしないけど) 金持ちゾーン

1 1/8マイル
多分2号艇が1号艇よりも
先行していたことを示している

3・11という数字に反応してしまう
日本人なのですが,
競技上の意味は不明

Barrier
これも意味は不明

戻ってきました
子供たちは水遊び

真ん中の島でも
飲んだくれております

さっきの鴨は
陸に上がって休んでおります
 
再度Uターン

脇のボート格納庫
 
New Orleans号に別れを告げます

 イギリスというと,どうしても馬文化が有名になっておりますが(情報源が偏っているからだろう,と言われると反論できないけど),ここにきて思うのが水文化。とにかく船がいろいろ。日本のように画一的でないのは,車のように量販できてないからである可能性が高いですが,あわせて皆さんオーダーメイドというか自分の船をしっかり持つなり借りるなりして使っているのではないでしょうか。このあたりの家の作りを見ても川と共に家や生活があるのは明らかでして,川が皆様の生活に身近なものになっているのがよく分かります。いやあ,これは非常に興味深い。同時に,川べりにこんな家を建てて,あるいは学校周りもそうだったんですが,川が増水したらどうするのか見ていて不安になります。2016年はちょうどフランスセーヌ川が大増水した直後でして,同じというかそれ以上の問題が起こるんじゃなかろうか。イギリスって王家が土地持ってるから土地収用とか日本より簡単そうだけれど,王家が持っている分政治的に土地をどうこうしづらかったりするのだろうか。誰か分かりやすくイギリスの土地制度について教えてください。

 そして,そのあとはまたまたイギリス文化の象徴,アフタヌーンティー。いやあ,こういう集まりでないと立ち入らない場所であります。


 そんなわけで,この日の日程は終了であります。結局レガッタのルールは分からずじまいでしたが,分かったところで今後レガッタに興味を持つかといわれると多分持たないですし,これ以上興味の対象を増やすと人生が容量オーバーするのでこれはこれでよかった。
 そして,皆様に別れを告げます。行きの反省をふまえ,帰りはバスに乗ることにします。いかんせん歩くと命にかかわる。車側にも迷惑だしなあ。
 ですが,スマホの電波が弱いなあ,などとちんたら歩いていたら,見事バスが目の前を走り抜けていきました。まあ,土曜なのでバスは30分に1本あるからいいや。
 ですが,なぜか最後の最後で日曜の時刻表を見て,バスが17時45分だと勘違い(本当は17時37分)。バスが17時41分に来て,慌てて手を出したのでした(この国では手で合図しないと通過する)。いやはや,危ない危ない。

大学入口。なお,歩行者などは想定されていないため,歩行者向け案内は皆無 バス停
分かりづらいですが,バス停と校門の間でも
歩道が消えます。学生は車しか使わないのか
郵便ポスト
金曜午後4:45にきたあと
土曜午前9時にくるという
よく分からない仕組み

 市内に戻りました。行きは死にかけながら歩いた道を,バスだとあっさりと抜けてしまうから困ります。いや,ありがたいというべきなんでしょうけれど。
 で,橋の上を歩いたりして若干遠回りしながら,無事帰宅。とりあえず,こうして命があることに感謝です。

市内。教会は閉まってたので中に入れず Red Lion Hotel
どうも有名っぽい
橋へ。歩道は狭いので,逆行するのは実は迷惑
歩行者は道の片方ずつ,一方通行にしても言いように思うが
 
橋からの眺め
   
Henley-on−Thames駅。終点っていいですねえ。

 なお,どうも現地の日本人の中で有名な情報誌であるジャーニーというもののオンラインサイトにレガッタについての記事がありました(こちら魚拓)。紙面版も現地で見せていただき,そこでこの情報誌の存在を知ったわけだけど)。Wikipediaよりもこっちの方がいいですね。

 最後になりましたが,素晴らしい経験を提供していただいた会の方々には本当に感謝感謝です。せっかく全てをセットアップしていただいていたのにそれを自分の準備不足とてきとーな行動でぶち壊す悪癖をなんとかせねば……。



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