マルゼンスキー

最強の持ち込み馬 イヤ味な馬シリーズ その2にしてFINAL

 マルゼンスキーは持ち込み馬だ。今では、持ち込み馬は、堂々と、偉そうな顔してクラシックに出られるが(でかい顔して出てたビワハヤヒデなんてのもいたし)、当時は、コソコソと、控えめにしても出られなかった。
 で、しょうがないから、マルゼンスキーは出られるレースだけで頑張ることにした。
 そのマルゼンスキー、致命的な弱点が一つあった。脚元だ。彼の脚部不安は有名で、満足な調教さえもできなかった。また、レースでしっかり追うこともできなかった。今のナムラコクオーと同じ感じだ。
 そのマルゼンスキーのデビュー戦。つまらん。圧勝だ。追ってない。追う必要も無い。あっけない逃げ切りだ。いや、別に逃げではない。「この馬は逃げ馬じゃないんだ」とは、マルゼンスキーの主戦、中野渡騎手の言葉だ。
 つまり、他の連中とはスピードが違いすぎたのだ。だから、穂かの奴等はついていけない。だから逃げてしまう。逃げ切ってしまう。
 どうだ、すごいだろ。
 2戦め。つまらん。
 以下略。
 で、朝日杯3歳S。関東3歳重賞のトップ。つーわけで、マルゼンスキー陣営も本気で(壊れない程度に)仕上げる。中野渡は、指示された通りに馬を走らせる。が、帰ってくると記者が騒いでいる。結構凄いタイムだったのだ。
 これを見て、中野渡は怒る。「俺を馬鹿にするな。こんなタイムなわけないだろ。」が、記者たちにしてみりゃ、なんで怒られるのかわからない。ただ正直に調教タイムを伝えただけなのだ。つまり、マルゼンスキーは、中野渡の体内時計をも狂わせたのだ。元から中野渡の体内時計が狂ってたんじゃねーのか?って言う疑問も無くはないが、一応、結構なジョッキーだ(結構なジョッキーじゃなかったら、こんな馬に乗せてもらえない)。中野渡を信じよう。それにしても、怒られた記者たちはいい迷惑だ。
 さて、レース。相手はヒシスピード。ここで前走のことを書いておこう。
 前走の府中3歳S(現東スポ杯3歳S)で、この2頭は対決している。このレースで、いつも通りタラタラ走るマルゼンスキー(それでも、他の馬にして見りゃ結構なスピードだ)。そこにやってくるのはヒシスピード。タラタラマルゼンスキーに、おーっと、ヒシスピードが並んだ!2頭並んでゴールイン!!
 結局マルゼンスキーが勝ったが、負けてたらシャレにならんぞ。
 で、朝日杯。このレースは(ある程度)真面目にやった。その結果、レコード勝ち。大差。面白くもなんともない。1'34"4。このタイムがいかに凄いかというと、これを更新するのがリンドシェーバーだって事と、安田記念で初めてあのタイムを破ったのがニッポーテイオーだってことからも分かると思う(分かれ)。NZT4歳Sのタイムが安田より早かったくらいで大威張りしてるオグリファンとは格が違う(何の格だ)。
 マルゼンスキーがクラシックに出られたら…多くの人が思った。
 「大外でもいい。賞金もいらない。だから、ダービーに出させてくれ」という中野渡のコメントは有名だが、本人は言った記憶が無いらしい。謎だ。誰が作ったんだ?それとも、酔っ払った勢いで言った言葉なのか?
 さて、マルゼンスキーのイヤ味の真骨頂。日本短波賞(現ラジオたんぱ賞)。
 もちろん1番人気。まあ、いつも通り普通に逃げ切っちゃってもいいんだけど、何とマルゼンスキーは、3〜4コーナーで、スピードを緩めやがったのだ。いわゆる「おいでおいで」だ。
 ケンカ売ってんとちゃうか?と思うかもしれんが、実際問題、ケンカ売ってたのだ。だが、誰もマルゼンスキーに勝てない。後の菊花賞馬プレストウコウを7馬身ちぎる圧勝。強い。かつイヤ味だ。
 さて、マルゼンスキーは有馬記念へ向けて調整。相手はGTT。さあ行くぜ。いくらGTTとはいえ、おれ様がパーフェクトの力を出せば、負けるわけがない!!
 が、マルゼンスキーに故障発生。結局、GTTとの対決はなかった。これは、マルゼンスキー側から見ても、GTT側から見ても、平和的な決着だったといえよう。よかったよかった。パチパチパチ。
 マルゼンスキーのラストクロップは今年生まれる。

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