長嶋監督の功罪を考える

 偉そうな、というより多くの人の反感を買いそうな題名ですが、そんなにすごいことを書くわけではありません。この題名で興味を引くことができたなら、それだけで十分役目を果たしています。
 まず、大前提として、僕は熱狂的な(?)広島ファンです。これは僕が野球を見るようになってからずっとのことで、なんでかはよくわかりません。そして、昔はアンチ巨人とも言ってたんですが、最近はそう言わなくなりました。なぜなら、最近そのアンチの意味が無くなってきたからです。巨人ファンはもちろんたくさんいますが、アンチ巨人もたくさんいるのです。その傾向は僕らの世代では特に顕著だと思います。しかも、野球はあまり見ないけど巨人は嫌い、という人が増えているのです。昔なら、野球はあまり興味ないけど、巨人が勝ったらうれしい、という人がかなりいたはずです。しかし今は、アンチ巨人の方が多いんではないかというくらいなので、多数派につくのも面白くないな、ということでアンチ巨人と言うのはやめたのです。もちろん、今でも巨人は嫌いです。

 前置きが長くなったような気もしますが、これも書きたかったことなんで、計画通りです。しかも本文は長くありません。批判ばかりされている長嶋監督は本当に悪いのか、ということです。これを書く直接の理由となったのは、8月に、7番ライトマルティネス、いわゆるミレニアム打線(この言い方は珍しく気に入っている)を組んできたことです。はっきりいって最近の野球の常識を考えれば論外です。動きのよろしいわけのないマルティネスを外野に置くことはもちろん、打線のつながりなどどうでもいい、ただホームランさえ打てればいいという打線も効率がいいわけありません。その他にも迷采配には枚挙に暇がありません、記憶に新しいところでは、斎藤雅樹の復活試合。9回2アウトから桑田をわざわざ出して、ディアスに逆転3ランを浴びました。そのまま岡島でいけば、そのまま終わっていたのは誰の目にも明らかでした。長嶋監督なりの筋書きがあったにせよ、あまりに強引でした。最悪の事態を予期したのか、解説(これもまたくせものですな)が、この交代は誰も反対しないでしょう、などと、よくわからないフォロー。なんで、斎藤の試合は桑田が締めないとならないのでしょう。一般人にもわかるように説明して欲しいもんです。とまあ、もうわかっているでしょうが、この例はただ自分がうれしかったから出しただけで、皆さんも長嶋監督の采配ミスといえば何個かは浮かぶでしょう。今シーズンは特に、長嶋また采配ミス、などという見出しをよく見ました。たしかに采配ミスは多かったのです。ただ、ここで僕が書きたいのはその采配ミスは悪いのか、ということです。野球で勝つためには采配ミスは悪いに決まっています。しかし、これが無くなっていたら、例えば、少し前に頻繁に名前が挙がった森祗晶氏が巨人の監督をやっていたらどうなっていたでしょう。恐らく8月中には優勝が決まっていたでしょう。それは巨人1チームにとってはいいことかもしれません。しかし野球界全体にとっては決していいことではないのです。毎日毎日巨人の圧勝ばかり見せつけられていたら、野球ファンどころか巨人ファンまで離れていってしまいます。接戦で無ければ視聴率は期待できません。金の力で選手をかき集めたチームが独走するようでは、他チームのファンも応援する気が無くなってきます。子供に夢を与えるようなゲームどころではなくなります。そのうち野球が話題にのぼることも無くなり、衰退していってしまうのです。その点長嶋監督はどうでしょう。話題に事欠きません。上に挙げた采配ミスもファンのためと捉えればなるほどと思います。ミレニアム打線なんて、ファンの目から見れば、あれほど魅力的な打線はありません。あそこで桑田を出したのも、チームを勢いづけるためだけでなく、ファンサービスの一環でもあったのです。打てなかった清原を使いつづけたのも、ファンに望まれたことだからなのです。こうして、終始野球の話題をふりまき続けた末に、ついにマジック点灯、優勝まで秒読み状態に入りました。これはこの監督以外では成し得なかったことでしょう。あれだけの戦力をそろえたチームの監督は勝つことだけを考えていてはだめ。野球界全体のことまで見据えていないとならないのです。その意味で、長嶋監督は野球の人気回復のために奮闘しているのです。自分では競馬界に大いに貢献していると思いこんでいる、競馬界のミスターとは好対照です。自分は野球界の発展のために力を尽くしているなどと自分では決して言わない長嶋監督はすばらしい監督です。

 こんな内容の文を書いていると、冗談だと思われそうですが、実は7、8割は本音です。本当はもっと前に書いているはずの文章だったのですが、いろいろ忙しくて、後回しになったしまいました。そのうちにマジック点灯。いけませんねえ。