BT in Britain その2~National Gallery

6 National Gallery

 さて、この日の後半戦はNational Galleryです。テートブリテンとかいうマイナーな美術館は知りませんでしたが(今思うと我ながら酷い)、ナショナルギャラリーは私でも知ってます。ナショナルなギャラリーです。
 そして、ナショナルギャラリーの最大の特徴は、無料であることです。これは美術に興味のない人間にはありがたい。

 そんなわけで、今回もBTさんに迷惑をかけないよう、最後の待ち合わせ時間を設定して各自単独行動をとります。あれ、やってることって競馬場に行ったときと変わらなくないか。

トラファルガー広場 展示されてた現代美術。”YOU”という作品。
指みたいな奴です
真ん中で写真を撮るとインスタ映えします
ナショナルなギャラリー側から見る
トラファルガー広場
ラグビーW杯の残骸が残ってます

 んで。
 私にはこのときの記憶が全くありません。覚えていることは、英語の勉強を兼ねてここでDVDを買って、日本に戻ったらBTさんにも貸します、と伝えたのにまだ貸していないことくらいです。あとは、例の馬の絵ですね。これはあとで登場します。
 それだけです。「○○の絵を見て感動した」とかいう記憶は一切残っておりません(これはテートブリテンの3枚との違い)。
 そして、テートブリテンとの違いでいうと、どちらも撮影自由だったはずなのに、テートブリテンに比べてこちらでは残っている写真の枚数が多いです。これは、なんとなく記憶にあって、テートブリテンに比べてこちらの方が写真撮ってる人が多くて写真を撮りやすい雰囲気だったことと、おそらく「有名な美術館なのでたくさん写真を撮ろう」という私の素人判断が合わさったことの結果だと思います。

 そのぶん、真っ白な頭で自分が撮った写真を見て、当時の自分の行動を客観的な目線で振り返ることができます。自分の低レベルな知識を見るのはそれはそれで自分としては面白いので(誰もが見られるインターネット上にその結果を残すことがいいのかは分からんけど)、復習としては非常に意義があります。
 その行動をとるにあたって、これを書いている2022年3月時点の自分の知識レベルを書きますと、2020年の西洋美術館ナショナルギャラリー展には行きました。その他、ちょこちょことこの手の展覧会には行くようになりました(といいつつ、職場から徒歩10分圏内にある損保ジャパンのひまわりは見に行ってません)。まあ、知識レベル、とかいう書き方をしてる時点で基本的に頭でっかちであることは変わりがありません。

 でですね。じゃあここに集うリア充どもはどうなのよ、というと、例えば私の同級生なんかはここの馬の絵の前で馬の絵と同じ格好をしてインスタに写真をあげてたりして、まあぶっちゃけ美術の楽しみ方は人それぞれであるとはいえ、多分美術を美術として見てる人は多くないだろ、という気もちょっとしてます。もちろん、1枚の絵を何十分も見入ってしまうような、美的感性を持った方も多数おられるでしょうけど。

 ではまずエントランスから。テートブリテンに続いて天井を撮ってるので、やはり私は絵よりも建築に目が行ってるようです。そして、寄付金コーナーを嬉しそうに撮ってます。

5ポンドと5ユーロじゃ
価値が全然違うと思う……
入口 天井 こちらは4ポンド寄付のお願い
こっちの方が5ユーロに近い

6.1 ひまわり

 写真を見ると、まっさきに出てくるのがひまわりでした。この時点でもやはり私は有名な絵としてゴッホのひまわりを認識していて、真っ先にそれを目指したのでしょう。やはりナショナルギャラリーと言ったらゴッホなのです。
 そして、この有名なゴッホのひまわり、どれだけ有名かというと、私は絵の説明の写真を撮っていません(ここに載せるかどうかは別として、ほかの絵は必ずセットになってました)。説明を撮るまでもなく、ゴッホのひまわりはゴッホのひまわりなのです。

 ただ、感性という点からみると、この絵と再会することになるナショナルギャラリー展2020のときにはこの絵を見て「実物で見ると立体感が凄い」と感心した記憶があるのに対し、このときの記憶がまったく残っていないので、やはり絵に対する感性というのは絵を見ることで深まっていくのではないか、と人間の成長を感じるところです。


 ひまわりまわりで残っている写真は↑の3枚。正面から撮った1枚目、前に人がいない状態で撮った2枚目、多少は立体感が気になったと思われる3枚目、という感じですね。

6.2 Two Crabs-ゴッホ

 続いて残されていた写真は、同じくゴッホさんのTwo Crabsでした。……特に感想はありません。そのあと、壁紙の色からして同じ部屋の中をうろついていると思われます(当時と今とでFloorplanに変化がなければ、Room43ですね)。
 National Galleryは基本的に絵の解説がホームページにあるんですね。これは凄い。

Two Crabs ひまわり以外の絵では
こんな感じの写真が残っている

6.3 マネやらモネやら

 今となっては点描画だの印象派だのといった単語も少しは分かってますし、この手の写実主義から印象派への流れも歴史的背景と共に多少は理解はしてますが、当然当時はそんな知識はございません。てなわけで、このあともなんとなく残された写真を見ていくことにします。なお、一応この時点でマネとモネという人物と、モネの睡蓮という絵についてはちょっとだけ知識があったはずです(ただ、モネさんが睡蓮という絵をたくさん描いていることは知らなかった。なぜ断言できるかというと、ナショナルギャラリー展の際に西洋美術館で睡蓮を見てたくさんあることに驚いた記憶があるから)。

 続いて写真に残されたいくつかの絵を。多分ですが、セザンヌとかルノワールとか、そういう有名人に引っ張られてる感があります。あと、水辺の景色が好きなのかもしれない。
 なお、検索してたらルノワールさんのThe SkiffはRoom41にあったので、おそらくこの時代のヨーロッパ絵画は全部壁紙の色が同じなのではなかろうか。

Coastal Scene
テオ・ファン・レイセルベルヘ
Portrait of Cézanne
カミーユ・ピサロ
The Skiff (La Yole)
検索したら「セーヌ川の舟遊び」と出た
ルノワール
The Execution of Maximilian
皇帝マキシミリアンの処刑としてWikipediaにありました
エドゥアール・マネ

 そして、みんな大好きモネさん。よく見たら睡蓮っぽい絵がここにも服すあるので、本来的にはここでちゃんと睡蓮という絵がたくさんあることに気付くべきだった。……我ながら本当にレベルの低い話だ。

Water-Lilies
クロード・モネ
手前のお二方は模写しておられました。なるほど、こうやって模写するんだなー
The Water-Lily Pond Water-Lilies, Setting Sun

6.4 ティエポロとトロイ

 ここにきて、おそらくまた馬に目が行っているのがわかります。ティエポロさんのトロイの木馬2作。これがどういう流れの作品かは知りません。

The Building of the Trojan Horse The Procession of the Trojan Horse into Troy

6.5 イタリアの風景・カナレット

 風景の前に、建物。

またも建物を撮影しております

 このあたりからイタリア風景画が増えます。もはや何が何だか調べるのも面倒なので調べることを放棄しますが、とりあえず当時のイギリス人にとって、ベニスという街、ベニスでおこなわれていたレガッタという競技は非常に魅力的なものだったのでしょう。もちろん、この当時は「グランドツアー」なるものが当時おこなわれていたことなど知りません(今もよく分かってないけど)。
 私もヴェニスなる場所には行ったことがありませんが、これだけ多くの写真を残していると言うことは、私から見てもカナレットさんが描くベニスという街は魅力的に思えたのでしょう。写真と知識にあふれた現代人の私から見てそうなんだから、当時のイギリスの人々にとってもっと魅力的な場所にうつっていたことは想像できます。


カナレットさんの作品が並びます

 カナレットさんは、イギリスの絵画も描かれているようですね。カナレットさん自身はイタリアの画家さんのようですが、イギリスにもやってきたのでしょうか(解説読んだら9年間イギリスにいたと書いてあった)。なお、Eton Collegeはナショナルギャラリー展で来日していたようですが、まったく記憶にありません。

London: Interior of the Rotunda at Ranelagh Eton College

6.6 Whistlejacket

 さあ、やってまいりました。馬です。馬を見ると俄然テンションが上がってしまうあたり、もう救いようがありません。
 馬の絵ですから、しっかりと解説を読まねばなりません。まずはNational Gallery。そして英語版Wikipedia。悲しき庶民である私としては、ナショナルギャラリーがこの絵を1100万ポンドで購入したという事実に驚かされます。1997年の円・ポンドレートははっきりしませんが、最安値は182円程度だったようなので、単純に計算すると、20億円程度の価値になります。パッと検索したところ、アーモンドアイの生涯獲得賞金が19億1202万9900円とのことなので、ほぼイコールです。
 20億円を稼いだこの馬については、Wikipediaが2冊の本を参照して解説しております。曰く、1749年にノーサンバーランド(Northumberland)のBelsay Castleにある、Sir William Middletonの牧場で生まれたとのこと。このBelsay Castleは今はEnglish Heritageの管轄下にあるようです(パッと見ても、Whistlejacketの生地としての売り方はしてなさそう)。
 WhistlejacketはGodolphin Arabianの孫でして、父はMogul。適当に検索したら、まさかnetkeibaにMogulの項目があるとは。というか、Whistlejacketの項目もあるのか。誰だつくったのは。Whistlejacketは生涯4敗しかしていないようですが、何勝して競走馬としていくら稼いだのかは謎です。

Whistlejacketの部屋 Whistlejacket

6.7 ターナー

 先ほど、テートブリテンでターナーさんを思いっきりスルーしてきた私ですが、ここNational Galleryでターナーさんの絵を何枚か写真に残していました。そして、この旅行記を書くにあたって、「ターナーさんっぽいな」と思ったら本当にターナーだったのでビックリしています(さっきスルーしたくせにここで写真に残していることに驚くと共に、今の私の浅い知識でもぱっと見で「ターナーっぽい」と思ったら本当にターナーさんだったことに驚く)。
 とにもかくにも、イギリスを代表する画家であるターナーさんは、なんやかんやと当時の私が見ても凄いと思わせる何かをお持ちの素晴らしい画家さんなのでありますよ。

 3枚とも有名な絵だと思いますが、特に3枚目は日本語のWikipediaもあるレベルで著名な絵ですね。今の私ならこれが著名作品であることが分かります。

Calais Pier Dutch Boats in a Gale
('The Bridgewater Sea Piece')
Rain, Steam, and Speed
- The Great Western Railway
当時の私も、ターナーさんのもやがかかった絵の描き方が
気になっていたようです

6.8 諸々

 ひとまとめにすることは大変心苦しいのですが(1枚ウン億円の絵も多かろうし)、これは当時の自分の知識と能力と感性の限界。Whistlejacketを見て満足していた可能性もある。
 なにゆえ部屋を行ったり来たりしていたのかもちょっとはっきりしないレベルで、自分がウロウロしていたようです。
 静物画の写真は1枚だけ残っていて、何故これだけ撮ったのかは不明です。
 Mr and Mrs Andrewsを描いたトマス・ゲインズバラさんの作品、ナショナルギャラリー展にはシドンズ夫人が出展されておりまして、例によって絵よりも女性に目が行く私は、このシドンズ夫人の絵がナショナルギャラリー展で最も記憶に残った絵の1つとなっております。
 ホガースさんの当世風の結婚シリーズは、大変興味深いもので、素人にもこういう連作は楽しめます。

Still Life with Lemons and Oranges
Luis Meléndez
Exhibition of a Rhinoceros at Venice
Pietro Longhi
An Allegory with Venus and Time
Giovanni Battista Tiepolo
Mr and Mrs Andrews
Thomas Gainsborough
Marriage A-la-Mode:
1, The Marriage Settlement
2, The Tête à Tête 3, The Inspection 4, The Toilette 5, The Bagnio 6, The Lady's Death

 多少なりとも知識をつけてからみると、どこかで見たことのある絵が多くてビックリしますね。
 ルブランの麦藁帽子をかぶった自画像なんかは、もちろん極めて著名な絵なのですが、例によって絵よりも女性に目がいってるだけっぽいですね。いやはや、情けない。
 そして、受胎告知(Annunciation)が西洋絵画において重要な題材であることはこの時点ではもちろん知りませんでした。いやはや。
 3作並んだヴァンダイクさんは、一応名前だけは知ってる人ですが、この「知ってる」は「なんとなくオランダ人にありがちな名前だから知ってるように感じてしまう」以上の意味はないと思われます。なので、「ヴァン・ダイクはフェイエノールトに所属している。○か×か」とかいう問題を出されたら悩みます。

Self Portrait in a Straw Hat
Elisabeth Louise Vigée Le Brun
The Annunciation
François Lemoyne
A Sporting Contest on the Tiber
Claude-Joseph Vernet
The Adoration of the Shepherds
Guido Reni
Saint Zenobius revives a Dead Boy
Giovanni Bilivert
髭の書き方あたりが気になっていたようです
Saint Margaret of Antioch
Francisco de Zurbarán
Philip IV hunting Wild Boar
(La Tela Real)
Diego Velázquez
Equestrian Portrait of Charles I
Anthony van Dyck
Drunken Silenus supported by Satyrs
Anthony van Dyck
The Horses of Achilles
Anthony van Dyck

 続いて、ルーベンス。これは(名前だけ・画家として)知ってるぞ。
 ダフィット・テニールスは当然知らなかったけど、アップの写真が2枚あって、ちょっと気になったっぽいな。

The Apotheosis of
the Duke of Buckingham
Peter Paul Rubens
A Lion Hunt
Peter Paul Rubens
Portrait of a Boy aged 11
Jacob van Oost the Elder
Philippe François d'Arenberg meeting Troops
Adam-François van der Meulen
人々や馬の表情が気になったっぽいな
The Rich Man being led to Hell
David Teniers the Younger
これも表情が気になったっぽい
Still Life: An Allegory of
the Vanities of Human Life
Harmen Steenwyck
急に静物画が気になったらしい
Two Followers of Cadmus
devoured by a Dragon
Cornelis van Haarlem
Young Man holding a Skull (Vanitas)
Frans Hals

 そしてレンブラント。前回のイギリス旅行、Royal Academy of Artsでレンブラントのデッサンの特別展を見たのは覚えております。展示されていたのはベルシャザルの饗宴という絵で、これは日本語Wikipediaがあるレベルの絵ですね。題名だけきくと、ベルシャザールがJCダートを勝ったご褒美にごちそうを貰ってる絵が浮かんできますが、それは知識と教養がない人が思い浮かべる絵です。

Belshazzar's Feast
Rembrandt
The Large Dort
Aelbert Cuyp
Still Life with Drinking-Horn
Willem Kalf
Still Life with a Pewter Flagon
and Two Ming Bowls
Jan Jansz. Treck
The Marquise de Seignelay
and Two of her Sons
Pierre Mignard
Mountain Landscape with Lightning
Francisque Millet
Three Men and a Boy
The Le Nain Brothers
Cognoscenti in a Room hung with Pictures
Flemish
Hollyhocks and Other Flowers in a Vase
Jan van Huysum
Flowers in a Terracotta Vase
Jan van Huysum
Fruit and Flowers in
a Terracotta Vase
Jan van Os
Landscape with
the Rest on the Flight into Egypt
Pierre Patel
The Conversion of Saint Paul
Karel Dujardin

6.9 再度ターナー

 ここにきて、再度ターナーさん。ここにきて、と書いてますが、自分がどういうルートを歩いたかよく覚えてないので、ターナーを見るために戻ったのか、それともたまたま混雑を避けた結果行き着いたのか、全く分かりません。ただ、ターナーさんの絵になにかを感じていたのかもしれません(人だかりができていただけの可能性は否定できない)。
 そして、Claudeさんの風景画。日本語Wikipediaもあるお方であります。
 それにしても、ここまでターナー好きならちゃんとテートブリテン行って見てきなさい、という感じですね。ただ、当然私はこの時点で「ターナー」という人物を認識していなかったので、テートブリテンを再訪した際もたいして注目しなかったのであります……。

Dido building Carthage
Turner
Sun Rising through Vapour
Turner
A Seaport
Claude
Seaport with the Embarkation
of Saint Ursula

Claude
Seaport with the Embarkation
of the Queen of Sheba

Claude

6.10 最後に

 再度ターナー、という感じにこれで終わり感を出しつつ、終わりません。BTさんとの待ち合わせ時間までまだちょっと時間があるので、もうちょっと見て回ります。
 大使たちの絵については山田五郎さんの解説動画が、醜女の肖像についてはこやぎ先生の解説動画が、それぞれ出ており、本当に勉強になります。説明の上手い人って凄いですよね。ここに至るまでに色々な訓練をされていたのだと思いますが……。
 そして、私がここで「醜女の肖像」を見ていたことを知りました。まったく覚えてなかった……。まったく、超有名YouTuberの方々が解説動画をあげるレベルの絵画を生で見ていたというのに、もったいない……。

Erasmus
Hans Holbein the Younger
The Ambassadors(大使たち
Hans Holbein the Younger
Lamentation of the Dead Christ
Giovanni Battista Naldini
Canon Bernardijn Salviati
and Three Saints
Gerard David
An Old Woman
('The Ugly Duchess')
Quinten Massys
The Four Elements: Water Fire Air Earth
Joachim Beuckelaer

 ここで時間がきたので、BTさんと合流。
 すでに書いたとおり、ここではDVDを買っており、さらに日本語のコンパニオンガイドも買っておりました。とりあえず本だけは買ってしまうという病気にとりつかれているのであります。

 なお、私はこのあと日本で開かれた「怖い絵」展@神戸にも行っているのですが、その際来日していた”レディ・ジェーン・グレイの処刑”をここで見ていたのか見ていなかったのかがちょっと気になっておりました。タダで見られるときにスルーして、来日して有料展示になった途端にありがたがっているというのはもう救いようがないお馬鹿さんです。
 ただ、あのクラスの絵を見て写真に残さないことはおそらくあり得ないので、多分このときは見ていなかったのだろうと思います。多分、ですが。

 ちょっとばかし絵のことが分かると、このナショナルギャラリーという場所の貴重さも分かるようになります。というわけで、もしまたロンドンに行く機会があり、ロンドン近郊で競馬が開催されていなかったら、是非またナショナルギャラリーを訪れたい、とわりと本気で思っているのであります。


BT in Britainその1BT in Britainその3


旅行記TOPテーマ別