Fontwell競馬場訪問記〜フォントウェルほんとWell

 2016年10月1日。みんな大好き都民の日です。
 土曜日なので、イギリスでも都民の日を休日にすべきか、という議論にはなりません。どっちみち休みです。とはいえ、イギリスに居ながらにして都民の志を持ち続ける私としては、都民代表として競馬場に向かうことにしました。

 この日の開催場はAscot、Redcar、Wolverhampton、Newmarket、そしてFontwell Park。このうち、ロンドンから行きやすいのはFontwell Parkなので、向かうことにします。

 私の手元に残っているメールによると、9時06分London Victoria発の列車で10時27分Barnham着です。
 翌日に凱旋門賞を控えたLondon VictoriaのLadbrokesは、いつも通り閑散としておりました。

 そして、ここで大事なことに気付きました。カメラ忘れた
 ……というわけで、本日の写真はスマホからになります。電池が切れないことを願うしかない。

←VictoriaのLadbrokes

 Barnhamは雨が降っておりました。今(2026年2月)Fontwellのホームページを見たところ、バスはまだ存在しているようですが、時間はあいまい。ただ、ピストン輸送をしているような空気感です。

Shuttle Bus

The shuttle bus will be operating from Barnham Railway Station to Fontwell Park for gates opening up until the time of the first race and will recommence from the penultimate race until 30 minutes after the last race (please note this service does not run on Boxing Day).

 あれ、こんなんだったっけ、と思ってInternet Archiveで直近(2016年8月21日)のものを見てみたところ、当時の交通案内は以下の通りでした。こっちの方が親切です。というか、このレベルの情報がないとバスに乗るのきつくないか。

BY TRAIN
The nearest station is Barnham. Trains run regularly from London Victoria, Portsmouth, Brighton, Barnham, Winchester and Southampton. Arundel Station is also just three miles from the track. On racedays, a shuttle bus service runs between Barnham station and the racecourse (FREE shuttle bus), starting from 2 hours prior to the first race and returning immediately after the last.

 この当時は、第1レースの2時間前にバスが出ていたようです。第1レースは1時50分ですから、11時50分見当。
 1時間半弱、時間を潰すことになります。天気は雨。テンション下がりますね。この状況で1時間。しかも、駅の周りを見ても我らがCostaもなければ、スタバもプレタなんちゃらもネロもない。
 というわけで、The・喫茶店という喫茶店ではなく、普通の街の軽食屋(ハンバーガー屋)的なところで時間を潰します。こういうところはどこまで長居していいか分からないから困る。

 当日の私のメモはこちら

- コープもすぐに発見
- しかし人がいない
- と思ったら、Twitterみてゲートオープン1200。一時間勘違いしてた
- しかしなにもなさすぎだろここ
- 帰り1947までなにしよう…
- 雨が降ったりやんだり、イギリス気候。やや肌寒い
- まさかの引っ掛けバス
- とうちゃく
Barnham駅
駅前の通り ここで時間を潰したと思われる

 で、11時45分頃、大型バスが登場。これを見て店を出たようです。
 が、どうもこれは目的とするものではないようでした。どうしてそれが分かったのかは覚えていないけれど、多分そこにいた競馬オヤジたちが動かなかったとかそんなレベルだと思います。
 しばらくして、お待ちかねの競馬場バスが到着。見慣れた2階建てバスです。そこに向けて、どこからやってきたのか分からない競馬オヤジがぞろぞろと集結します。

引っかけバス バス到着 雑な手書き案内

 バスは12時15分ころに到着。雨もあがり、ここまで来たら特に怖いものなしです。いつも通りの手順で競馬場に入ります。

入口への道 楽団がいました チケット窓口 事前に買ってたらしい

 そんなわけで、入場しました。レープロを買います。この日のレープロはこんな感じ。

 場内図と、障害。

入って正面 騎手の医務室の脇にレープロ売り場 場内図 障害に関する10の事実 障害展示

 さて、ここからいつも通り場内探索を始めるわけですが、その前にお勉強コーナー。
 このFontwell Parkについて、Jim Beavisさんという方が、『The History of Fontwell Park』という書籍を執筆しております。このおっさん、競馬の歴史研究マニアなようでして、RACINGHISTORIANというウェブサイトをもち、複数の競馬場の書籍を執筆しているようです(本人サイトの書籍リスト)。また、私もこの人の本は、ウインザー競馬場訪問時にも購入しており、買う価値のある著者であると判断した上で購入したのであります。
 そして、Fontwell Parkの本は、私が見たとき配送料込みで2500円弱だったので、購入。海外の本を買うのは(本の品質への感度が弱いので)勇気が要るのですが、この人の本はWindsorで買って知っているので安心して注文できました。2026年2月時点で、お値段が8000円前後になっており、タイミングは良かった。せっかくなのでほかの競馬場のものも買いたいのだけれど、軒並み1万円前後というお値段。困ったモノです。

 ごたくはさておき、こちらの本はもちろん英語。私は日本人なので日本語大好きですから、みんな大好きNotebookLMさんに要約して貰いました。
 この本は10章構成。全部やると日が暮れるので、第1章、Fontwell Park設立の経緯をみてみます。

創設の背景と初期の構想
フォントウェル・パーク競馬場は、ベテランの競走馬調教師であるアルフレッド・デイと、彼の甥でジャーナリストのメイリック・グッドによって創設されました。第一次世界大戦後、アルフレッドが調教師を引退することを考え始めた際、メイリックがアルフレッドの調教場を競馬場に転換することを提案したのがきっかけです。彼らは土地の長さを測り、既存のプランプトン競馬場と遜色ない広さがあることを確認し、プロの競馬場運営会社であるPratt & Co.に相談を持ちかけました。

ライセンス取得への苦難
1921年にライセンスを申請しましたが、認可を得るまでの道のりは平坦ではありませんでした。当時、新しい競馬場には「1マイルの直線コース」が求められていましたが、フォントウェルにはそれがありませんでした。また、近隣のボーンマスでも競馬場建設の計画が進んでおり、ライセンス獲得のための競合となりました。

メイリックとアルフレッドは粘り強く交渉を続け、以下の理由などを挙げて許可を求めました。
* 第一次世界大戦で閉鎖されたポーツマス・パーク競馬場の代替となること。
* 周辺に定期的な障害競走(スティープルチェイス)の開催地がないこと。
* 鉄道やバスなどの公共交通機関によるアクセスが良いこと。
* 「8の字型」のコースという、フランスのオートゥイユ競馬場から着想を得たユニークな設計であること。

最終的に、1923年8月にナショナル・ハント委員会からライセンスが交付されました。

競馬場の建設と開場
ライセンス取得後、土地の購入とスタンド建設のために新会社が設立され、建設費用として約7,000ポンドが投じられました。地元の宿や駅も、競馬客を迎え入れるために改修されました。
**1924年5月21日(水曜日)**、ついにフォントウェル・パーク競馬場は開場の日を迎えました。最初のレースは「ウォルバートン・スティープルチェイス」で、ジェム(Gem)という馬が最初の優勝馬となりました。

ボーンマスとの対比
競合していたボーンマス競馬場は1925年に開場しましたが、多額の建設費用による負債や観客数の伸び悩みにより、わずか2年後の1927年には閉鎖に追い込まれました。一方、フォントウェル・パークは、人口の多い都市が近くにないにもかかわらず、その独特の雰囲気と運営により着実に成功を収めていきました。

 個人的に興味深かったのが、両名がライセンス獲得に向けて挙げた理由。本では全部で12の理由が挙げられており、NotebookLMさんはそこから4つ抜粋しています。せっかくなので12個全部列挙してみます。NotebookLMさんがどのような理由でこの12個から4つを抽出したのかは分かりませんが、とりあえずそこは本題ではない(そもそもこの12の理由も本題ではないのだが)のでスルーしておきます。

アルフレッド・デイがナショナル・ハント委員会に対し、新しい競馬場の許可を求めて提出した12の理由は以下の通りです。

1. ポーツマス・パーク競馬場が陸軍省の要請により開催日程表から完全に姿を消したため、フォントウェル・パークが同じ地域をカバーすることになる。
2. プランプトンからトーキーまでの海岸沿い約150マイルの間には、ワイト島とハンブルドン・ハントでの1日限りの集まりを除いて、定期的な障害競走(スティープルチェイス)の開催地がない
3. 南部地区には十分な数の馬がいる(聖霊降臨祭の月曜日には8つの開催がある)。
4. 近隣には、ロウアー・アルフリストン、ロッティングディーン、ディッカー、ショアハム、ポートスレイド、アランデル、シングルトン、ストートン、そしてソールズベリー平原といった調教センターが存在する。
5. 公共のアクセスの良さ。ブライトンからポーツマスへのバスや、バーナム・ジャンクション駅への列車がある。
6. 晩春と初秋に開催を提案しており、他の開催との重複や(馬の足に負担がかかる)硬い馬場状態を避けることができる。
7. 多額の賞金を伴う高級な開催を提供するために必要な資金は、すべて民間から募る
8. 郡内の多くの紳士たちが、クラブへの入会を申し込んでいる。
9. 適切に運営されていない認可外の競馬に馬が流れるのを阻止できる。
10. 望ましいのであれば、ロバート・ゴア氏やキャスカート氏が提唱するように、馬が常に視界に入る「8の字型」のフランス式コースにできる。フランスの様式に合わせた環境を整える(例:パリ伯爵の邸宅から移設した柱をクラブハウスの支柱に使い、ヴェルサイユ宮殿を再現したツゲの縁取りのある1/4マイルの砂利道を設けるなど)。
11. ハードル(障害)コースは楕円形で、約半マイルの直線コースがある。
12. スタンドを高台に建設するため、視界を遮るものなくレースを観戦できる。

 さて、気になったものは仕方がない。本題と関係なくてもここで疑問点を成仏させます。というわけで、8の字型コースのメリットを聞いてみました。なお、NotebookLMさんにはこのFontwell Parkの本しか読ませていません。

フォントウェル・パーク競馬場の特徴である「8の字型」コースには、出典によると主に以下のような利点があります。

このように、8の字型のコースは観客にとっての楽しみと、馬の能力を活かす戦略的な要素の両面で利点をもたらしていました。

 我々日本人は中山大障害に育てられておりますから、8の字型コースをあまりに見慣れており、「競馬場に8の字型コースがあって当然」だと思ってしまいます。が、実はこれはまったくもって一般的ではないのです。
 というか、日本競馬はイギリスの影響を多大に受けているはずで、これほどまでに8の字型コースが増えた(現状どんどん減ってるけど)理由が気になります。単に場所がなかったというだけのことなのでしょうか。それとも、なにか別の理由があるのでしょうか。

 とまあ、だらだらと無関係なことを書き綴って(書いたのはNotebookLMさんであって私ではないのだが)字数を稼ぎました。大人になっても原稿用紙の埋め方に困った子供の作文的なことをやっていて恥ずかしくないのか、と言われそうですが、まあこれに対しては「恥ずかしくない」と即答できます。

 では、あらためて場内探索へ。
 先に、この日の私の場内探索中のメモを貼り付けます。

- なにここ。なんで音楽隊いるの
- なんでスタンドたくさんあるの
- すげーすげー。なにこの植え込み。
- 最後の直線の上りが露骨にわかる。こりゃすごい
- しかも左右にも傾いてる(やや外に傾斜)。ほんとうにそのまま丘に作ったんだな
- ピンは一ポンド寄付扱い
- コースがちいさいのでほぼ全部見える
- 馬が客の脇を帰っていく。鼻息が聞こえる
- ここすごい

 このメモから私の興奮が伝わるかどうかは分かりませんが、とにかくこのFontwell Park、お勧めです。ARCがやっているとは思えません(レープロのペラペラさはいかにもARCだけど)。とにかく、小規模イギリス障害競馬場として、楽しめます。とにかく、最後の直線の坂が凄い。それが観客側にもリアルに伝わる構造も凄い。そして、スタンドが4つあって、植え込み含めて細部にもしっかり手入れが行き届いています。
 今思い返しても、カメラを忘れた自分のやらかしを後悔するばかりです。なにやってんだ。

 まずはパドックまわり。Pre-Parade Ringは見られず、Parade Ringのみです。そして、ウイナーズサークルはパドックから出っ張る形でくっついています。コンビニのローソンのキャラクター、ローソンクルー♪あきこちゃんの顔がパドック、頭のお団子がWinner's Circleだと思えば分かりやすいですね。

ウイナーズサークル パドック
パドック脇の装鞍所 そこからパドックを見る
一番奥から厩舎方向 そこからスタンド方向 反対側(スタンド側)から

 で、バックヤード。
 「植え込みが馬のかたちになっているだけでなにをそんなに騒いでいるのか」という突っ込みを受けそうですが、イギリスの競馬場でこんなのを見られるとは思ってなかったのでありますよ。ほかにもやってるところあるんだろうけど。
 どれだけ自分がここを気に入ったかというと、私のTwitter(ではなくなった何か)のアイコン写真がこれだったりするのであります。

バックヤード側からスタンド方向 スタンドからバックヤード方向
思いっきりボケた
馬の形の植え込み 私のTwitterアイコンは←
(ヘッダ画像はPardubice)
Paddock Marquee そこからスタンド方向をぐるり スタンドまわりの持ち込み物飲食禁止
奥側からスタンド方向 ぐるりと
音楽ライブ用の場所 子供の遊び場 ポニーにも乗れる様子
3レースと4レースの合間に撮った楽団の皆様の様子

 素晴らしい競馬場なのですが、食事の貧弱さはいかんともしがたい。まあイギリスですからね……。

Classic Hot Dogは6ポンド
ちょっと円高になってたので1000円程度でしょうか
まあこんなもんでしょう
Comedy of Errors Bar脇の売店

 スタンドは4つ。奥のどでかい豪華なスタンド(年表にはPremier Grandstandとありました)には縁が無いので放置するとして、のこり3つです。ゴールに近い方から、Comedy of Errors Bar Stand、Tecom Stand、Nickel Coin Bar Standであります。Barが入ってるスタンドは名前が分からない(マップだとGrandstand & ○○Bar)ので、勝手にBarの名前をスタンド名にしてます。このうち、Tecom Standはパドックから目立っておりましたね。

 Tecom Grandstandは、おそらくネーミングライツ的なもので名付けられたと思われます。スタンドには、The Kerman Standの設立に関するボードが貼られておりました。
 そして、このTecomスタンドのまわりには競馬の豆知識ボードが貼られております。当地に関係の深いNational SpiritやBarの名前にもなっているComedy of Errorsは分かりますが、唐突にこんなところでキンチェムを紹介されても困ってしまいます。また、高額外れ馬のThe Green Monkeyも、まさかイギリスのこんな競馬場で恥さらしの目に遭っているとは思っていなかったのではないでしょうか。ちなみに、海外の高額外れ馬については、2022年にJAIRSがRacing Postの記事を和訳して掲載しているのでこちらを参照

 Nickel Coin Standの名前は、おそらく1951年のグランドナショナル勝ち馬からきているんだと思います。そして、2026年2月時点でFontwell Parkのホームページからダウンロードした地図をみると、NickLE Coinとあります。いや、NickelとNickleはよくあるタイポだとは思うんだけど、公式地図がやるとなると、なんだかな。
 この馬、私の貧弱な検索能力では全成績が出てこない。ちょっとGeminiさんに探して貰いましたが、Geminiさんも見つからないと仰せなので、諦めました。ちなみに、Nickel CoinとFontwell Parkの関係については、以下の通り説明して貰いました。

調教師とフォントウェル・パークとのゆかり
 Nickel Coinを管理していたのは、ジャック・オドノヒュー(Jack O'Donoghue)という名調教師です。彼はサリー州レイゲート(フォントウェルと同じイングランド南部)に厩舎を構えており、1946年に自身の調教師としての初勝利を挙げたのが、このフォントウェル・パーク競馬場でした。
 このような地元地域・同競馬場との深い縁と、グランドナショナル制覇という歴史的な功績を称え、フォントウェル・パーク競馬場には彼女の名を冠したスタンドやバーが設けられました。また、過去には同競馬場で「Nickel Coin Challenge Cup」という記念レースが開催されていたこともあります。
パドックを挟んでスタンド方向 Nickel Coin Bar Stand 2026年2月にダウンロードした地図
Nickle Coinってあるよね??
Nickel Coin Bar入口 脇のトイレ
ピンボケ
Nickel Coin Bar Standの裏には競馬場の歴史
Tecom Standの本当の名は
The Kerman Grandstandというらしい
Tecom Standの裏手 Tecom Stand内部 Tecom Stand
Fontwell Park is Chase and Hurdle Course National Spirit Comedy of Errors 突然キンチェムの紹介 こちらも当地と無関係な
The Green Monkey
Tecom Standまわりには豆知識の貼り紙
Comedy of Errors Bar Stand Comedy of Errors Bar スタンド前ではAir Ambulanceの店
寄付するか何かしたらピンバッジをもらえました
Air Ambulanceの車が当たる
クジ的なものもやっていた様子
Tecom Grandstandからの眺め 2016年10月1日時点の
Top JockeyとTrainer

 そして、コースの様子です。とにかく、最後の坂が凄い。そして、観戦スペースも同じ傾斜があるので、坂の傾斜が分かりやすい。

一目見て分かる傾斜
Tecom Grandstand前からコースを渡れます レース10分前に閉まります ブックメーカー
ゴール方向 スタンド
最終コーナー方向 渡り終えたあたり 内馬場には移動遊園地
Nickel Coin Stand前あたりから さらに奥の車いす席の前あたりから
車いす席からの眺め

 そうこうしているうちに、パドックに馬がやってきました。続く。

Fontwell Parl競馬場観戦記


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