ヒロノブータン(ブータン展in広島)
どういう流れだったか完全に記憶からぶっ飛んでおりますが、たまたま広島に用事があったので、ついでにブータン展に乗り込んでみました。元々興味のあった展示ですが、うまくここでタイミングが合ったのであります。なお、実は別の人に「広島ブータン展に行きたい」とか行っていて、その人と翌週広島に行ったんだけれど、その時点で既にここに行っていた、というのははっきり言って不審に思われて仕方がないよなあ。こういう自分の行動は本当にダメだよな、と反省しきりです。もう遅いんだけど。
まあ過ぎたことは過ぎたこととして、広島県立美術館ブータン展です。
今回の展示は日本・ブータン外交樹立30周年ということのようです。ブータン国王というと、アントニオ猪木(というかアントキの猪木)氏に似た人が来日していた絵面を思い浮かべるところで、あれは2011年の大震災の直後にご夫婦でいらしたのだったかと記憶しています(外務省はこちら)。あれは外交樹立25周年で元々予定されていたものだったんでしたっけ。
さすがに国王夫妻がちょこちょこ日本にやってくることはできないさりとてブータンとしてはジャパンマネーは魅力的、というわけで、今回の開催に至ったのでありましょう。
今回の展示は4部構成。@ブータンの踊り「チャム」の紹介、Aブータンの生活の紹介、Bブータン仏教の紹介、C王室所蔵品の紹介です。Cをよくぞ出してきたな、という感じですね。それだけブータン王室が日本との関係を重視していることの表れではないでしょうか。なお、このうち@とAは写真撮影可となっておりました。現代日本人のインスタ映えにも配慮しているのであります。
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入口とマニ車
この手の展示品に宗教的な力はあるのでしょうか |
1 ブータンの踊り「チャム」
第1部。チャムとはなにか、をいちいち調べていると日が暮れるのでそこまでは触れませんが、とりあえずみんな大好きYouTubeで検索したところ、ツーリズムEXPO ジャパン2016でブータン王立舞踊団の方々が演じられた動画と、NHKの動画を違法アップロードしているものが見つかりました。多分英語で検索かけたらもっとたくさん出てくることでしょう。
2 ブータン的生活様式
生活様式、といっても、海外への展示ですから、基本的には生活に用いられる所蔵品の展示となります。ここも写真OKだったのでそれなりの数撮ってますし、例によって復習のときに触れないと人生で二度と日の目を見ることがないわけなんですが、他方で全部載せるのも芸がなさ過ぎるので、まあ適宜。
なお、図録の解説と現地の展示解説はほぼイコールです。
まずは刀。ブータン刀は権威と権力の象徴だとのことであります。
続いて、民族衣装。1989年に民族衣装を着用することが勅令で定められた、とのことです。西欧式権利意識に凝り固まった現代日本人からすると、中学校の制服でもあるまいし、なんというルールなのか、と思ってしまうところですが、これで国が幸福なのであればそれはそれでいいのではないでしょうか。部外者がああだこうだいうべきことではありません。
民族衣装については私にはいいも悪いも分かりません。美的センスゼロの人間からすれば、気候にあった衣装ならばなんでもいいんじゃないかと思ってしまうのであります。
美的センスゼロ+織物についての知識ゼロな私からすると、これらの衣装の特徴や機能などはさっぱり分からず、なんとなく南〜東南アジアでみかける色合いだな、程度の認識しかありません。貫頭衣が珍しいと言われるとなんとなくへえそうなのか、とは思うんですが、貫頭衣が珍しいながらも使われている理由なんかが分からないのでそれ以上コメントできないのでありました。
頭でっかちな人間はこれだからダメなのであります……。ただ、男性用衣装の「ゴ」は、動きやすそうでよいですね。寒くないのか心配になりますが。
3 ブータン仏教と信仰
私個人としては、最も興味があったのはここです。
そもそもチベット仏教とはなんぞやすら分かってない分際でなにが興味があっただ、という感じではあるんだけど。
ここから撮影禁止となるので、記憶ベースというよりは図録ベースで話を進めます。なお、展示リストにちょっとだけメモしてたんだけど、メモが汚すぎて何を描いてるのか分からなかったりします。
ブータンといえばチベット仏教、という認識だったのですが、図録のケンポ・プンツォク・タシ氏と東博の岩田侑利子氏のコラムによると、ブータンにも土着信仰があり、ボン教と呼ばれているようです。ただ、これもブータン固有の土着信仰というより、チベット域全体的な土着信仰をボン教と呼んでいるみたいですね。まあ、インドから仏教が入ってくる前にもなんらかの信仰があってしかるべきだものな。
「ブータン」「ボン教」で検索すると、鳥取環境大学の浅川滋男先生がこの辺りのことで科研費をとってました。丁度これを書いている2022年、「ボン教:弱者を生き抜くチベットの知恵」という本が出版されたようです。編集代表の熊谷誠慈先生は京大の方のようですね。京大のこころの未来研究センターなる研究所にはブータン学研究室という組織もあるようです。
てな具合に、ボン教というものの存在を認識したところで、仏教に関する展示です
基本的には仏像と、やはりチベット仏教といったらこれ、タンカの展示です。基本的にここにきている仏像もタンカも、ブータン国立博物館の所蔵品なので、寺院に鎮座されている仏像やタンカとはまた違った意味があるのかもしれませんが、それは私には分かりません。とりあえず、仏像は日本のふくよかな仏像に比べると痩せ型なものが多い印象。タンカは教科書やら写真やら、もしかしたら宮島大聖院等々のちべっとと縁の深い寺院で見てきたものとも大きく違わないような印象でした。私には細かい意味や違いなど分からんのですよ。
自分がメモをつけていたのは、111番グル・タクポの立像。第2のブッダとして崇敬されるパドマサンパヴァの憤怒の表情が気に入ったようです。このパドマサンパヴァさんのことは当然知りませんでしたが、どうもチベットに密教をもたらした、チベット密教の開祖とされるお方のようです。
そして、119番と120番。いずれも仏様が人間を踏んづけている姿を描いたタンカです。この踏んづけられている人は、擬人化された欲と怒りをあらわしているとのこと。まあ、119番のハヤグリーヴァは馬頭観音のことでして、当時の私は単に馬頭観音という文字に目が行っただけだったのかもしれません。また、120番については、「色々キモい」というJKのような感想メモが残っておりました。わざわざ広島までブータン展を見に行った感想がこれだからどうしようもないのです。
4 愛されるブータン王室
Last but not least。最後はブータン王室からの展示品です。ある意味目玉であった、2011年の国王来日時に日本に寄贈されたブータンシボリアゲハは残念ながら展示期間を過ぎておりました。
展示としては、先ほど見てきたブータンの生活様式の集大成、という感じで、ブータン王室の帽子や衣服が展示されておりました。
天皇の国日本に住む人間としては、国王が尊敬される・崇敬されるというのは分かるんだけれども、「愛される」という感覚は分かるようでちょっと分かりません。ですが、ブータンでは国王というのは愛される存在なのでしょう。少なくとも、日本向けには、国王は愛されている存在であるというアピールをしているようです。
そんなこんなで、ブータン展終了。もうちょっと歴史や文化に深入りしたものを期待してたんですが、まあそう易々と国の秘密を公開するわけにもいかんでしょうから、これで十分であります。
図録にはブータン航空の宣伝も載っておりました。基本的にはネパール・インド・タイから入るようです。いずれも仏教と関係の深い国ですね。
この日の後半戦は、縮景園であります。縮景園は広島県立美術館のすぐ目の前にあります。ここに行くのも10年以上ぶりのはず。
ヒロノシュッケイ
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