Oh 尾形〜大尾形展2022

 府中の競馬博物館で開催された大尾形展。
 小さい方の尾形というとグラスワンダーで印象最悪な孫の尾形充弘さんが思い浮かんでしまうのでありますが、尾形藤吉さんには罪はありません。時代的なものがあるとはいえ、偉大な記録を残した尾形藤吉氏にまつわる展覧会。これを逃したら二度とチャンスはなさそうです。というわけで、乗り込みました。

 乗り込んだのは、エリザベス女王杯の裏であります。これは、競馬場限定で配布されるという噂のあった特製のレープロがほしかったからであります。物欲万歳。
 目的地は競馬博物館なので、東府中から歩いて競馬場に入っていくかたちになります。レースには目もくれません。

東京競馬場東門

 そして、真っ直ぐ競馬博物館へ。
 尾形展にあたり、尾形会、そして準備中になくなった伊藤正徳氏・吉田晴雄氏の奥様から花が出ておりました。


 正面の看板。勲章がお出迎えです。これだから大物は困りますね。まあ、天皇陛下から勲章なんて貰わなくても、自力で天皇賞獲ってるからいいんでしょうが……。


 そして、とりあえずパンフレットを見ます。JRAも経費削減が進んで、競馬博物館の特別展のパンフが本当に貧相になりました。これ、もうちょっとなんとかならんのでしょうかね。最悪PDFバージョンでもいいから、せっかくの展示にふさわしいものつくれんのでしょうか。


 場内の展示なのですが、まずは壁沿いに尾形氏の歩みを壁面展示。そして、真ん中の島には尾形氏にまつわる人の紹介や、トロフィーやレイの展示です。人がいた関係で邪魔しないように撮影してたので、ちょっと順番がずれて自分でもはっきりと思い出せなくなってます。まあ気にしない。

こんな展示 尾形藤吉年譜 尾形会

 尾形さんは調騎兼業でスタートしております。時代を感じますね。

少年時代 騎手デビュー 園田実徳
北郷五郎
厩舎開業 多賀一
伊藤勝吉
ハクショウとナスノの
一騎打ち
最前列左端が尾形藤吉、その右が北郷五郎、さらに函館孫作とのこと 騎手引退
トクマサ ダービーのゴール 山中清兵衛氏服色 アスコットとベルリンオリンピック 騎手時代の主な騎乗馬

 騎手引退、そして戦争へと向かっていきます。
 クリフジの主戦騎手、前田長吉氏が戦争で亡くなった(正確には戦後のシベリア抑留で亡くなった)ことはよく知られておりますが、保田騎手も従軍しておりましたし、尾形組も分散状態になっていきます。戦争がなかったら保田騎手はもっと大レースを勝てていたのではないか、という気もしますが、もし前田騎手が存命だったら保田騎手の活躍はなかったのかもしれない、という気もしますね。ここでのたらればは妄想が広がるところであります。

戦時中の競馬 アステリモア
テツモン
藤吉と馬頭観音、内厩と外厩
府中前の馬頭観音、全部建てた人は判明してるのかな?
タイレイ
エステイツ
ロックステーツ
ヤマイワイ
騎手になるには
能力検定競走
戦後の競馬 ヤシマドオター
ハタカゼ
カンセイ
ヤマイチ
ハクチカラの海外遠征
ワシントンバースデーHの1着賞金は5万ドル、日本円にして1800万円だったとのこと
大尾形の時代 MG対決 ミッドファーム
グレートヨルカ
尾形四天王 ワイルドモア
一門とは
吉田善哉
シャダイターキン
最後の日本ダービー制覇

 そして、尾形藤吉にまつわる人々と、トロフィー等の展示であります。千明牧場というと、2002年に千葉の千明牧場で大変お世話になりました。あのとき伺った話をきちんと記録に残しておかなかったのは私の大失態です(当時は若くて、人間の記憶が一生ものだと思い込んでいたのです)。

千明康、コレヒサ・メイズイ・コレヒデ 千明さんの服色 メイズイの皐月賞 メイズイのダービー メイズイ馬像
コレヒデの天皇賞 コレヒサの天皇賞 メイズイの皐月賞
このころはひらがなで
「さつき」なんですね
メイズイのダービー 大礼記念内国産新馬
優勝競走優勝賞品
(ハクシュン)
大礼記念内国産新馬
優勝競走優勝賞品
(ハクシュン)
フレーモアのダービー フレーモアの生産者賞状 フレーモアの土田荘助氏服色 土田荘助&フレーモア サンシャイン号口取り
騎手ではなく「騎士」です
吉原貞敏とラッキールーラ
最後のダービーであります

 そして、見慣れた勝負服が目に入ってきました。我らがライスシャワーのオーナーで知られる、栗林さんの先代、栗林商船の栗林友二氏の名前が出てきます。なお、私はここに行くまで栗林さんの下の名前は「ゆうじ」だと思ってました。「ともじ」が正解です。確かに、時代的にはそれっぽいものな。
 そして、ハクチカラなどで有名な西さん。どこかで書いてると思いますが、日本的判官贔屓人間である私はハクチカラよりもキタノオーが好きなので、こういう昔の競馬を振り返る場面でもやっぱり名前が出てくるチャンスのないキタノオーが愛おしく思うのであります。

見慣れた服色 栗林友二とクリフジ・クリノハナ・クリペロ クリノハナの皐月賞 クリノハナのダービー
西博氏服色 西博とハクリョウ、ハクショウ、ハクズイコウ、ハクチカラ、ハククラマ ワシントンバースデーH優勝商品
保存状態の良さにビックリ

 1階奥のビデオコーナー。人がいません。30分くらいの長時間にわたる番組が流されておりました。
 壁面展示で引用のある尾形藤吉さんの本、「調教の秘密=わが競馬」はこれを書いている2023年1月22日時点では蓑虫屋さんでも売り切れになっております。なんとかJRAが相続人を全員見つけ出して再発売の許可取り付けてもらえんでしょうか。

人がいない中で流れるビデオ 壁面展示 尾形充弘 松山康久 吉田晴雄 高橋秀昌 松山吉三郎
保田隆芳 野平祐二 尾形藤吉が語る調教の秘密

 そして、映画「日本ダービー勝負」の紹介も。この映画、確か2022年のタービー前に東映さんが一時的にYouTubeで無料配信しておりまして、タイミング良くそれを見つけたので見ました。映画ならではのデフォルメはありますし(史実では野平祐二がミスったレースが伊藤正徳のミス扱いにされている)、シベリアでなくなった前田長吉氏が戦死扱いされてたりもしますが、尾形軍団を知れるいい映画でした。ただ、後半はダービーへ向けた広報?のような感じで、しかもこの年のダービーはいわゆるA・T対決で盛り上がったダービーなので、尾形さんは比較的蚊帳の外でした。もちろん、今となってはアローエクスプレスの乗り代わりや谷水さんのこだわりで喘鳴症を発症したとされるタニノムーティエの悲運などで語られるこの世代に違う角度から切り込んだ映像が残っているのは貴重だと思うのであります。


 そして、2階へと上がっていきます。2階へあがると、壁面展示として”尾形一門”の系図が飾られていて、真ん中に前田長吉騎手のブーツとステッキ。なかなかにインパクトのある展示です。
 改めて思うと、グラスワンダーにしてもスピードワールドにしても、なんというか、尾形一門の美浦軍団、もうちょっとうまく出来たんじゃないか感がありますね。

 この門下生の系図、基本的には所属していた人を列挙していくスタイルであり、1人1カ所しか出てこられないので、漏れも多そうですし、具体的に本当にそうなのか、という人やもっといいところに繋がってもいいだろ、という人もいそうです。とはいえ、これはこれで1つの系図として面白いですね。

展示案内 関口睦介なんかも入ります 今村聖奈まで繋がりました スピードワールドの
小西一男はここ
国枝さんや伊藤雄二 松山親子はここ
私は竹原騎手は
康久厩舎時代しか
知りません
キムテツ大塚も
一応繋がってます
野平軍団
坂本勝美って藤沢厩舎に
所属してなかったことを
今知りました
工藤嘉見〜南井親子
伊藤修司軍団
伊藤正徳はここ 前田長吉氏のステッキとブーツ

 さて、最後は主な門下生に関する展示です。
 最後に藤沢和雄メモリアルコーナー的な展示があり、藤沢さんへの配慮というか若いファンへの配慮というか、まあ色々な思いを込めた展示がありました。本来のテーマからしたらズレてる気がするけれど、まあこんなもんでしょう。

展示の様子 美馬信治
大久保亀治
大久保亀治から大久保正陽へ
そして、ナリタブライアンのダービーゼッケン
国枝栄アパパネ三冠
記念キャップ
岩佐宗五郎
古賀嘉蔵
古賀さんはキンテキで大障害勝利
伊藤正四郎〜伊藤雄二
大久保正陽はボード
作ってもらえなかったのに
伊藤雄二は作って貰えました
尾形藤吉さんが伊藤正四郎に送った紋付袴羽織 ウイニングチケット
ダービー優勝カップと優勝レイ
エアグルーヴ年度代表馬受賞記念
エルメスが記念品作ってるんですね
松山吉三郎
松山康久親子
モンテファストの天皇賞 ダイナガリバーのダービー ミスターシービーのダービー ミスターシービーの菊花賞
ウィナーズサークルのダービー ジェニュインの蹄鉄 内藤潔
保田隆芳
保田隆芳さんのムチ
アステリモアのオークスと
ハクチカラのダービー
1960年リーディングジョッキー
八木沢勝美
前田長吉
八木沢勝美のムチ
クリノハナのダービー
クリノハナのダービー 前田長吉氏の道具箱
「東京競馬場」の文字が
入ってるんですね
野平祐二
工藤嘉見
ここまで来ると私も知ってます
スピードシンボリの蹄鉄
ワシントンDC国際出走時
シンボリルドルフのダービー
伊藤修司
森保弘昭
キングカメハメハ蹄鉄と勝負服
松国さんは伊藤修司門下生とのこと
森保重勝
田中和夫
ベロナのオークス
伊藤正徳 尾形盛次
尾形充弘
ラッキールーラのダービー グラスワンダーの
有馬記念2回分

 さらに、真ん中にはミスターシービーの三冠蹄鉄と、南井騎手や河内騎手らのダービー優勝ステッキ。

 ところで、ミスターシービーの三冠蹄鉄を見ると、明らかにダービーのものだけ素人目にも見た目が異なるのが分かります。私は素人ですので、競走馬の蹄鉄というのがどの程度個体差があるのか、例えば右前足と左後足とで全く異なるのかも知りません。さすがにシンザン鉄が特製品なのは分かるけど。
 そこで、ちょっとした知り合いの方に、「ミスターシービー、ダービーだけ蹄鉄が見た目全然違うなー、というのがちょっと気になっただけなので……蹄鉄を博物館に入れるときって、どの足のものを使うといいとか悪いとか、なにかルールあるんでしょうか?」という質問を投げかけてみたのでした(正確には、前半と後半のメッセージは順序逆)。
 すると、ありがたいことにきちんとお答えをいただき、大要、「蹄鉄の提出の件ですが、特に決まってはないみたいです。で、シービーのダービーのモノは、調教時のアクシデントだか何かで変形した?のかな?それを打ちかえずにレースに向かったそうです。シービーは爪に不安があったことご存知かと思いますが、「打ちかえるリスクの方が怖かったんだ」と師から直接聞きました。こちらからはそこまでは振らなかったんですが、先生の方から口に出してくれたあたり、結構、一か八かの判断だったのかもしれないですね。」というご回答をいただきました。いただいたご回答を無断で全世界に向けて公開するのはいいことではないのですが、泡沫サイトなのでお許し下さい。個人的には眠らせるにはちょっともったいない。


ミスターシービーの三冠蹄鉄 ナリタブライアン アグネスフライト キズナ

 さてさて。最後はカズオ・フジサワコーナー。三冠トレーナーの大久保さんの扱いに比べて、なぜこんなに偉そうなのか、というスペースのさかれっぷりですが、まあ引退したばかりですし、藤沢和雄引退記念展示的な意味合いも込められているのだと思います。

藤沢和雄 顕彰者の選定 一人で大きなスペース 2020年JRA賞 1997年JRA賞 1996年JRA賞
2003年JRA賞 バブルガムフェローの天皇賞 タイキシャトル蹄鉄
1998年度代表馬記念
レイデオロのダービー 主な管理馬

 以上、大尾形展でした。ミスターシービーの三冠蹄鉄なんてこれまで見比べたこともなかったので、まさかダービー蹄鉄だけ違う形してるとは思ってませんでした。

 外に出てふと荒廃したエプソム遊歩道を見てみると、なにやら見慣れないものが。元号が令和になったことを記念して、エプソムダウンズ競馬場の会長からの記念植樹があったようです。エプソムとの提携はちゃんと生きてるんですね。京都とドンカスターの関係とかは今はどうなってるのだろうか。

枯葉の中荒廃気味のエプソム遊歩道 エプソムダウンズ競馬場の会長兼ジョッキークラブ副会長の植樹

 このあとは、AGFフィールドへ。



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