光と影の迷宮

 絵画というものにまったく興味のなかった私が、多少なりとも興味を抱くようになったのは、BTに連れられてテートブリテンに行ったからであります。
 繰り返しますが、私が興味があるのは絵画ではなく若い女だろう、という突っ込みは甘んじて受け入れます。でも、同じ若い女がうつっているからといって、「グラビア好きです」と「絵画好きです」とでは、なんというか教養と深みが違いますよね。なんなんでしょうか、絵画から溢れ出る教養感は。

1.British Library

 そんなわけで、ときは2016年6月15日。試験を終え、修士論文を書かねばならない私は、とりあえず文献探索の旅と、知り合いの事務所訪問という2つの目的を果たすために午前7時10分発のバスに乗ってロンドンに到達しました。断片的に残されているのは、British Libraryの写真であります。
 この日ここで何をしたのかはもはや私の記憶からは飛んでおります。

British Libraryの最寄り、St Pancras駅 British Library

 その後、事務所訪問をして、暇になりました。というわけで。なんとここでテートブリテンに行ってしまったのです。本当はもう1カ所行ける場所が合ったのだけれど、事前リサーチの結果をカレンダーなり何なりにいれておかないから、こういうときに現地で忘れるのですね。

2.Tate Britain

 やってきました、テートブリテン。なにをするかって、前回見た絵を再度見るだけです。
 もちろん、この時点で「ターナー」なんて人は知りません。「前回見た絵」のうち2枚はおそらく教養ある大人であれば誰でも知っている絵ですが、もちろんそんなことは知りません。オフィーリアの元になった神話も知りません。そんなもんです。

到着

 で。例によって絵のなんたるかを分かっているわけではないので、目指すところは「馬と女」です。こう書いちゃうとなかなかに酷いですが、実質がそうなんだから取り繕っても仕方がない。
 ただ、おそらくこの日Tateに行ったのは「たまたま時間が余ったから」程度のことでして、それゆえカメラを持ってなかったんですよね。せっかく時間遣ったのにこれはもったいないことをした。まあ、今の時代(2016年時点でも)スマホでそれなりの写真は撮れるからいいんだけど。私が撮ったTateの馬と女の絵がHUAWEIを通じて習近平さんの元に届いているかと思うと、現代文明の発達に感謝ですね。

Joshua Reynolds
The Archers
なんでこれを撮ったのか不明
ほかにも増して酷い写真だし
James Ward『The Moment』
馬です
誰の絵かも確認してなかった
ヒツジです
Atkinson Grimshaw『Liverpool Quay by Moonlight』
唐突に1枚写真が残ってました
こういうもやがかった絵、もしかして当時から好きだったのか
ウォーターハウスさんの「シャロットの女
ミレイさんの「オフィーリア
シャロットの女とオフィーリアには作品名の写真が残されていないのですが、これは前回撮ったという確信があったからなのだろうか
ハッカーさんの「受胎告知」 最後に思い出したようにJoseph Wright of Derby『An Experiment on a Bird in the Air Pump』
よく見ると女性がうつってるのでそっち目的かという気もしますし、
ダービーという名前に引っ張られた可能性もありますが、
これに関しては単に光の加減が気に入っただけだと思います

 そんなわけで、絵に全く興味のなかった私が2回も同じ美術館に行くという、ビックリ体験をしたのでありました。

3.テート美術館展@国立新美術館

 さて。ときはかわって2023年。あれからもう7年が経過しています。私は何も成長していません。
 しかし。国立新美術館で、テート美術館展というものが開かれていると聞いて、ちょっと反応してしまいました。なにも成長していないとしても、あれから「ターナー」の名前くらいは覚えました。いや、ほかに誰か知ってるのかと言われたら誰も知らんので、まあその程度なんだけど。

 今回のテーマは「光−−ターナー、印象派から現代へ」であります。馬も女も関係ありません。でも、とりあえずあのテート美術館に関する展示がるということであればとりあえず行ってみたくなるのが人情であります。

やってきました国立新美術館 2E

 そんなわけで、パンフレットなど。
 訪問したのは月曜だったのですが、混んでました。みなさん、仕事や学校は大丈夫なんでしょうか。

パンフレット 音声ガイド
出品リスト 撮影OK区間

 行くまではさっぱり理解してなかったんですが、ターナー作品は展示のごく一部で(まあ借りるのもお高いだろうし現地にもちゃんと展示しないといかんよね)、光をテーマとした作品が多数並ぶという感じでした。
 というわけで、太っ腹なことに日本でも一部撮影OK。てことで、いくつか撮ってみました。日本で混雑にまみれて写真撮るくらいなら、イギリスでゆったりと写真撮れたんじゃないか、という疑問はわいてきますが、そういうことを気にしてはいけません。

 ではまず、ターナー4作品。絵のことはまったく分かりませんが、接近してみると特に何かを細かくかいてるわけではないのに、遠くから見るともやっとしつつもインパクトのある絵として成立してるから凄いですね。

ターナー『陽光の中に立つ天使』 ターナー『湖に沈む夕日』 ターナー『陰と闇−大洪水の夕べ』 ターナー『光と色彩(ゲーテの理論)
−大洪水の翌朝−創世記を書くモーセ』

 続いて、その他の絵。枚数が多い絵については、もちろん自分が気に入ったケースもあるでしょうが、人気がなくて写真が撮りやすかっただけのケースもあるので注意が必要です。
 絵についてコメントする能力はありませんが、光を描くのって言葉で言うよりも大変でしょうし、いやはや、プロの画家って凄いですね。
 絵についてコメントする能力がないので違う部分でコメントすると、今回のキービジュアルの1つにもなっているジョン・ブレットのイギリス海峡の絵、写真を取りたい人が多いのと、絵がパノラマなのとで、不自然に絵のまわりにスペースが出来てるのが面白かったです。また、メインビジュアルになっているせいでチケットとセットで写真に撮る人も多く、それも不自然な空間の原因になってたように思います。それはそれとして、遠目から見ても、アップで見ても、絵として破綻しないが凄いな。

ジョン・マーティン 『ポンペイとヘルクラネウムの崩壊』 ジョセフ・ライト・オブ・ダービー
『噴火するヴェスビオ山と
ナポリ湾の島々を臨む眺め』
ジョン・リネル『風景(風車)』 ジョン・コンスタブル
『ハムステッドヒースのブランチヒルポンド
土手に腰掛ける少年』
ジョン・コンスタブル 『ハリッジ灯台』
ジョン・ブレット 『ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡』 不自然なスペース
ジョン・エヴァレット・ミレイ
『露に濡れたハリエニシダ』
ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー
『ペールオレンジと緑の黄昏−−パルパライソ』
クロード・モネ
『ポール・ヴィレのセーヌ川』
クロード・モネ
『エプト川のポプラ並木』
カミーユ・ピサロ
『水先案内人がいる桟橋、
ル・アーヴル、朝、霞がかった曇天』
アルマン・ギヨマン
『モレ=シュル=ロワン』
ヴィルヘルム・ハマスホイ
『室内、床に映る陽光』
ヴィルヘルム・ハマスホイ
『室内』

 草間彌生さんの作品もあるんですね。写真に撮りづらいものを無理に取ろうとするとおかしくなります。自分の間抜け面を全世界に発信しないようにだけ気をつけます。まあ、所詮間抜け面なので発信されても困らんのですが。

草間彌生 『去ってゆく冬』

 そして、現代アートちっくなコーナーへ。

ペー・ホワイト『ぶら下がったかけら』 ゲルハルト・リヒター
『アブストラクト・ペインティング(
726)』
デイヴィッド・バチェラー『ブリック・レーンのスペクトル2』『私が愛するキングスクロス駅』

 そして、これまたキービジュアルになっているオラファー・エリアソン『星くずの素粒子』。


 この日の私の現場コメントは以下の通り。例によって内容は浅いです。とりあえず「不思議」と「凄い」を連発すればいいと思ってやがる。

19ターナー『光と色彩』 不思議な色。凄い
13アニッシュ・カプーア 『イシーの光』 不思議な魅力。これ見たのかな?
6ジョン・マーティン 『ポンペイとヘルクラネウムの崩壊』世界観と色使いが凄い
11エドワード・バーン=ジョーンズ 『愛と巡礼者』 壁画的、バラの茂みが凄い
30アルマン・ギヨマン. 『モレ=シュル=ロワン 』 よく見たら水面側が創作なのがおもしろい
33ヴィルヘルム・ハマスホイ 『室内、床に映る陽光』 考えてみたら室内を描くって意味分からないよな
9173リズ・ローズ 『光の音楽』、ダン・フレイヴィン『ウラジーミル・タトリンのためのモニュメント』 こういうのは不思議な楽しさがあるな


4.蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる

 これで終わっても良かったんですが、新美術館でもう1つ面白そうな展覧会が開かれていたので、せっかくなので入ってみました。特に何か思い入れがあるわけではありません。というか、蔡國強さんのことは初めて知りました。さいこっきょう、という読み方で合ってるのか若干不安です。とりあえず、今も残ってる展示案内

1E パンフレット 出品リスト
出品リスト

 どうも、火薬を用いた作品づくりをされる方のようでして、広い展示スペースを有効活用した作品展示がなされておりました。それ以上のことは特に付け加えられないのですが、とりあえずスケールの大きい作品が多かったです。なお、私にとって「スケールの大きい作品」は、単に「サイズの大きい作品」を意味します。

蔡國強について 写真OK、動画NGでした


 まあ細かいことはさておくとして、火薬・爆発を用いた作品というのは、人為的にコントロールできる部分と出来ない部分とがあるわけで、これまで見たことのない作品でもあり、面白かったです。

展示室の様子 起源:故郷での探求 影:庇護のための祈り 混沌と超高温:日本での出発
作品名は分かりません 昇龍のためのドローイング
胎動:外国人のためのプロジェクトNo.5 隕石クレーター 人類が自分たちの惑星に作った隕石クレーターNo.1
サントヴィクトワール山を遠く眺めセザンヌに捧げる爆破
ビッグバン原初火球 富士山−空気のピラミッド
私はE.T.−天神と会うためのプロジェクト:
外星人のためのプロジェクトNo.4
大脚印:外星人のためのプロジェクトNo.6 胎動II:外星人のためのプロジェクト No. 9
インフレーションと拡張
日本での展開から世界へ
原初火球以後 月にあるキャンバス
外星人のためのプロジェクトNo.38

 そして、火薬と関係のない、LEDライトを使った展示。検索したところ、「キネティック・ライト・インスタレーション《未知との遭遇》」という作品名なのではないかと思われます。
 それにしても、アインシュタインの顔ってインパクトありますね。

奥の作品は、歴史の足跡のためのドローイング、というらしい 延長

 展示の観覧順序もよくわかってませんでしたが、この裏手にいわきに関する展示がありました。「蔡國強 いわき」で検索すると、色々と彼といわきの関係が出てきます。「いわき白天花火《満天の桜が咲く日》」という作品をつくられたようですね。



 最後に、ということでいいのかも分かりませんが、とりあえず最後の展示。

引力と帰還:永遠の故郷としての宇宙 平静な地球:外星人のためのプロジェクトNo.18 望郷:人類のためのプロジェクトNo.4
人類の墓碑銘:外星人のためのプロジェクトNo.13 原初火球の精神はいまだ健在か?

 はい、お疲れ様でした。

 初めて知った方でしたが、芸術は爆発だ!を実践した、という感じでこれまで見たことのないものを見られたので満足です。

 それにしても、チェルトナムやエイントリー開催のためにイギリスを再訪して、ついでにテートブリテンも再訪したいですな。休みとお金を下さい。



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