いーないなべその3〜いなべ草競馬編〜

 だらだらと歩いて,ようやく三里駅。本来であれば,ここが両ヶ池公園への最寄り駅になるはずです。
 ……が,特に競馬の案内なし。まあ,このあたりの草競馬の扱いなんて所詮そんなもんだ,ということは多度の経験から分かっているので,いまさら特段の感慨もわいてきません。ただ,もうちょっと頑張ってもいいんじゃないかな,と競馬ファン的には思います。これを書いているのは大町からの帰りのバスの中で,大町も似たようなものだったので,おそらく最初に串木野,次に望月と,地元が頑張っている2つに行ってしまったのが下手に期待値を上げてよくなかったんだろうな,ということは薄々感づいてはおりますが。

三里駅 地域バスの時刻表
競馬に合わせた特別運行などあるはずもなく…
ぼろぼろになっている東海自然歩道の看板

 さて,案内板がありませんので,会場の両ヶ池公園まではGoogleMapと勘で向かっていくことになります。まあ,基本的には田園風景で,いざとなったら道無きあぜ道を歩けばいいかな,と地元を思い出しながら思っていたのでありますが,よく考えたら小学生があぜ道を歩くのと,スーツ着た人間があぜ道を歩くのとでは怪しさに格段の違いがあるよな。

 てきとーに歩いていたら,八坂神社跡の碑や,お墓の区画(このあたりは寺院がないのにお墓の区画だけある場所が結構多い気がする)とその前の南無阿弥陀仏碑があったりして,そこそこ楽しめはしていたのですが,途中で道が途絶えるなどして,両ヶ池公園と逆方向に進むハメになったりしました。
 ある程度近づくと,遠くから競馬のアナウンスが聞こえてくるんですね。アナウンスが聞こえてくるのに,公園と逆方向に歩かないといけない……これはストレスたまります。いらいら。

こんな道を 八坂神社(牛頭天王社)跡
神社合祀の関係か,
それとも単に区画整理でなくなっただけか
南無阿弥陀仏

 しかしまあ,なんとか両ヶ池公園に到着。いやぁ,疲れた。歩いた歩いた。
 池のまわりを歩いて行くと,木につながれた馬,そして馬場が見えてきました!

(多分)両ヶ池ってこれのことですよね 馬が歩く 馬は木につながれております

 到着時(10時40分すぎ)で予選第4レース。馬場のまわりには多くの観客が陣取っており,遅参者はいいスペースを見つけるのに苦労いたします。

輪乗り中 春二番 アストロン

 とりあえず,一レースだけ見た感想として,「凄い砂煙!」というのが挙げられます。どうも,この日まで全然雨が降らなかった(のにこの日に限ってこのあと雨が降った)という事情もあったようですが,とにかくすごい砂煙で,それが馬の疾走感をかき立てます。あと,相良の砂浜よりもここの方が土の粒子が細かいってのもあるんだろうな。
 で,例によって散策します。
 コースが1周何メートルなのかは明らかにされませんでしたが,見たところ多度よりはちょっと小さいかな,という気がしたので,500m前後ではないかと思います。特徴として,直線部分が短いことが挙げられます。つまり,圧倒的に先行有利。スタートの出遅れは致命傷になりかねません。馬場自体も多度よりも少し狭い印象。
 スタートは多度と同様に太鼓です。特にファンファーレなどはありません。
 レース進行は,予選5レース(すべて軽種),昼休み後にポニー2レース,中間種2レース,それから本戦5レース。ポニーと中間種は各1レースのみです。これは三重の特徴っぽいですね。2レースやってもいいだろうに(現にここに出てる馬は遠征時には2レース走ってるだろうし),なんでだろうか。まあ,あえてこれまでの慣習をいじる必要もないな。

待機する馬たち 本部桟敷 基本は3周 管理は大安愛馬会のようです 公園案内図
予選の出走表 ポニー2レースと,
寄付金出資者一覧
中間種2レース いなべ愛馬会会員

 予選第5レースは1コーナー付近で見ました。
 ここは土手になっており,座って見下ろすことが出来る上に,芝生なので人気スポットになっております。
 そういえば,ここいなべ草競馬では,木柵がある場所とない場所があります。極論を言えば,自己責任で馬に接近することも出来ます。ただ,自己責任とはいっても,現実的に何かあったときに馬と騎手が無傷でいられる保証はどこにもないわけで,皆さんもそのあたりは当然心得て観戦されておりました。
 レースはビデオで撮ってたので写真なしです。


 そんなわけで,11時10分ころには午前中のレースはすべて終了。10時開始ですから,5レースやるのにそこまで時間はかかりません。
 ここで昼休みに入ります。昼休みのイベントとしては,12時から子どもの乗馬体験がありました。これはどこでも行われてますね。是非ともみなさん馬を好きになるとともに,レースを好きになっていただき,好きになったついでに応援する馬にお金を賭けることも覚えていただければと思います。

 ちなみに,お店は一応簡単なものが2つ出ておりました。1つはかき氷屋さん。この日は途中から雨が降って寒くなったので,商売あがったりだったのではないかと思います。もう1つはポテトと飴屋さん。なぜポテトと飴を選んだのか若干不思議ではありますが。下戸なのでアルコールはどうでもいいのですが,見たところ売っていないようでした。かつての競輪場ばりに麦だの米だのといったらかき氷屋さんが氷で冷えたビールを出してくれる……なんてことはおこらないと思われます。

 昼休みのみ,内馬場への立入りが認められているようです。せっかくなので内馬場で食事。ちなみに,一人で食事してる寂しい人間はほとんどいなかったように見受けられましたので,慣れてない人は要注意。
 この両ヶ池は,どうも西岸寺の玄海という住職さん(どうでもいいが,玄海というと女性しか浮かんでこないのは確実に幽白のせいだな)によって開かれたようですね。西岸寺ってどこにあるのかな。


売店

近くにあった自販機
 
昼休みに入ったコースの状況

ダート

公園の解説

内馬場には神社も
    
決勝レースの出走馬

みんなの憧れ
乗馬体験。ぐるっと小さく1周できます。皆様のNHKが取材に来ておりました 馬場整備

 さて,午後のレースは1時ころから始まります。ちょうど時を同じくして,雨がパラパラと降ってきました。う〜ん,なんともタイミングの悪い…。
 まずはポニーレース。普段軽種レースを見慣れている身としては,やっぱりポニーレースが見ていて楽しいです。


 続いて,中間種。中間種も1周です。
 それにしても,雨が降って周囲が暗くなってきたため,被写体がぶれまくっております。


 そして,いよいよ軽種による本戦。まずは好飛切競争。「好」と書いて,「このみ」と読むようです。これは3頭立て。
 優勝したのはフリーエム。好発からそのまま押し切りました。やはり先行有利です。まあ,実力差の出やすい草競馬では先行できることがそもそもの能力の表れともいえますが。


 引き続いて,平飛切。素人的には,好飛切が平飛切よりも下ってのがよく分からんところではあります。
 ところで,何度も書きますが,ここは小回りで直線が短いので,先行できるかどうかが結果に直結します。そのため,みなさんスタートライン付近のいい場所に陣取ろうとします。後ろの馬も,出来るだけ前へ前へも意識がありますので,スタートライン周辺には馬が密集します。
 そうすると,1頭だけスタートしてしまう馬なんかも出たりして,フライングが頻発するようになります。フライングとするか,レース成立を認めるかはスターター(太鼓を叩く人)が決めているようで,スターター氏が太鼓を叩けばスタート成立,叩かないと不成立でやり直し,とされているようです。ただ,1Cあたり(1コーナーと2コーナーの中間)に赤い旗を持った方がおられましたので,スターター氏と赤旗氏の共同作業で決めてるのだと思います。晴れているなら別にいいんですが,雨の中で何度もスタートやり直しが続くと,結構見ていて疲れます。
 騎手の方も「合わせるから先に行っていいよ」などと,スタートを合わせるのにいろいろと苦労されているようでした。
 スタートがうまくいかない原因の1つとして,馬場が狭いために馬が勝手に動くと逃げ場がなく,結局スタートラインを超えた方向にしかいかないことがあるようです。まあ場所に限界がある以上,しかたないよな−。予選はともかく,決勝は1レース当たりの出走頭数を減らすこともできないし。

 そんなこんなで,スタートに苦労しつつも,優勝したのは多度のマルイシでありました。


↑いい表情!

↑ スタートに失敗した図

再スタート

皆様のNHKから主催者にインタビュー

 レースは進んで,小飛切。相変わらずスタートで苦労します。優勝はマシヤザン。



スタートラインから後ろに下がるのを嫌がる図

 そして,中飛切。ここから周回数が変わり,4周になります。
 相変わらずスタートが遅く,雨が強いこともあって皆さん結構フラストレーションがたまっております。
 このレースでは,ホワイトソックスのハミが外れるアクシデントがあり,スタート後1C付近で落馬。関係者の方がダッシュして馬を捕まえて,馬の激突等のアクシデントは発生しませんでした。馬場が狭いだけに,一度アクシデントがあると多重事故が怖いですね。また,騎手の方はなかなか立ち上がらなかったため,見ているこっちはかなり心配になりましたが,どうも大事には至らなかったようで,最終レースも周囲の心配をよそに騎乗されておりました。
 そんなアクシデントのあったこのレース,勝ったのはミナミノスター。相良では6レース(上から3番目)で2着でした。なお,今回落馬したホワイトソックスも,マツカゼショットとともに相良に出ており,8レース(準メイン)でホワイトソックスは1着,マツカゼショットは2着でありました。


 さて,いよいよ大飛切……の前に,馬場整備。雨が強いので,馬場整備を待つ時間に体力を奪われます。でもまあ,年に1回の草競馬。メインレースを最良の馬場コンディションで行うべきなのはいうまでもありません。
 さて,馬場整備が終わっていよいよ各馬入場であります。大飛切は5周であります。

 そして,いよいよ熱戦の火蓋が……切って降ろされようとする前に,またもスタートが合いません。なんといっても大飛切ですから,各馬気持ちは前へ前へ。しかし,ここはスタートに厳格です。一部の方は「スタートさせちゃえ」とおっしゃっておりましたが(おそらく観客の気持ちもそっちでしたが),なかなかスタートが認められません。そうこうしているうちに,マツカゼオリュウが内馬場に逸走して柵を破壊するアクシデントも。
 まあ,このあたり,各馬・各人の気持ちがそろわないとどうしようもないんでしょうね。相撲でいうところの待ったが連発されている状態に似ております。相撲は1対1ですが,このレースには5頭の馬と5人の騎手がいるわけで,やはり呼吸を合わせるのは大変です。
 仕方がないので,並足で1周してからスタートする,ということになりました。

いかにもスタートしてそうな写真がありますが,
いずれもスタート失敗であります

 そんなわけで,いよいよスタート!
 その直後。パキッという音。「枝でも踏んだか?」と思ったら,骨折でした。ヤシロショウグンが競争中止。足を引きずりながらも,関係者の方々が迅速に対応して馬場から待避させました。それにしても,人生で初めて馬が骨折する音を聞きました。といいますか,下手すると人間も含めて「骨折音」を初めて聞いた気がします。同馬がこのあとどうなるのか,NPには知る由もありませんが,前回の相良のアクシデントといい,やはりこういう馬ではこういうことは起こりうるんだよな。
 個人的には,スタート不成立の連発によってスタートとストップを繰り返したことと脚への影響の関係がちょっと気になります(ただ,同馬はなかなか後ろに下がらず,ある意味スタート失敗の原因になってたように見えたのも事実です)。
 そして,レースはというと,スタートの前に並足から駆け足に切り替えていた馬がおり(厳密にはルール違反だと思うのですが,まあこれ以上スタートを繰り返していられないのだろうと思います),結局スタートは上手く合わず,着差が開く展開。一部からは「大飛切でこんなに差が開くなんて」という声も聞こえてきました。このスタートの問題は,ゲートを使えない草競馬の永遠の問題だろうと思います。
 そういえば,境勝太郎氏が著書でバリアー式のスタートはとても難しく,ゲート式なんて誰でもスタートできる,ということを語っておられたのを思い出します。

 そんなこんなで,いろんな意味で大荒れとなったレースは,春一番が優勝。レースが終わった頃には雨足が弱まっておりました。


 さて,行きの失敗を糧に,帰宅路は最短コースを進めます。途中,「宮地の里」という場所があり,水車小屋が復元されておりました。とりあえずこの日は水車は動いておりませんでしたが,現役の水車なのかどうかは不明です。


 で,三里駅に到着。よく分からんのですが,北勢線は自動改札化されて洗練されていたのに,この三岐線は硬券を使っておりました。そんなに予算に差があるのか…。





線路は続くよ 駅窓口 愛の傘
遠方から競馬を見に来て
傘を忘れても安心です
硬券 三里駅 周辺案内には
一応両ヶ池公園と
草競馬のことが書かれてました
車内

 さて,本日最後の目的地,猪名部神社へと向かいます。

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旅行記旅打ち