台湾旅行記その9

 そんなわけで,やってまいりました圓山駅。孔子廟へと向かいます。この日のために湯島聖堂で日本の孔子廟がどういうものかを予習してきたのです。

 さて,孔子廟に向かう途中に道教寺院があったので一応ご挨拶。
 それにしても,そこかしこに道教寺院があります。日本もとくにお稲荷さんが道ばたに唐突に祀られていたりしますが,台湾では道ばたの道教寺院がいずれも立派なのにびっくり。石でこれだけのものをつくろうと思ったらそれなり以上のお金がかかると思うんだけど,一体誰がその制作費とこの場所の土地代を支払っているのでしょうか……。

保聖宮 花が目立ちます
疲れたのでついてるかどうかもチェックせず
内部
きれいです

 さて,もう少し歩くと孔子廟脇の壁が見えてきます。立派な赤い壁であります。
 そして,過度には明らかに見ざる言わざる聞かざるをあらわしている彫刻が。「見ざる言わざる聞かざる」って,日本だと語呂合わせ的に猿になってますが,台湾でもサルなんですね。
 で,検索してWikipedia先生に聞いてみたところ,もとになるのは論語。「非礼勿視,非礼勿聴,非礼勿言,非礼勿動」という一説が留学僧を通して日本に輸入され,庚申信仰とともに日本に広がったとのことです。論語がもとであれば,孔子廟にあるのはむしろ当然。そして,論語では「動くなかれ」も入っていることからして,ここの彫刻が4体のサルからなることも納得がいきます。
 なお,三猿は世界的にも人気があるようで,こんなページもあるんですね。奥が深いです。

入口かと思ったら違った 3猿+1 動くなかれ
なんで彼だけ下にいるのでしょうか
三猿

 さて,そんなこんなで孔子廟に入っていきます。日本の湯島聖堂では入口からいきなりどでかい日本仏教的な門が登場しましたが,ここは大きさは控えめに,でも装飾は賑やかな門が登場であります。
 なお,内部には解説があり,しかも日本語のパンフレットもあります。いやぁ,ありがたい。順番は普通?に台→英→日→韓ですね。やはり祖師廟が謎だ。


 まだまだ道教的(←台湾的,といった方がいいのかな?とにかく湯島聖堂とは違う,という意味で使ってる言葉です)色彩の強い中,奥へと進みます。
 すると現われるのは池です。そして,池の真ん中には鯉。さっきの龍山寺にもあったので,宗教というよりは台湾(中国?)の文化的なものなんでしょうね。
 あと,なにかと龍があらわれますが,これってなんなんでしょう。Wikipediaには「中国では皇帝の象徴」とあります。が,孔子と龍がどう結びつくのか,無学すぎてよくわからんのでありました。


鯱と龍の合体?

 続いて,儒(←正しくは木偏)星門。なかなか聞かない門の名前ですが,これも論語か何かに由来があるんでしょうか。
 門自体はぱっと見上が湾曲している台湾的なかたちですね。
 いろいろと,細かい造形で様々な絵や彫刻があります。意味が分かったら楽しいんでしょうが,意味が分からないのであまり見ていて楽しくありません。これってどこかで経験したな,と思ったのですが,日光の陽明門だな。

道教寺院で見たような柱 狛犬なし 細かい彫刻 これは象なのか,
想像上の別の動物なのか…
解説

 そして,儀門。「儀」ってなんとなく儒教っぽい言葉ですね(←こんなレベルの知識を全世界に晒してどうするんだろうかと自分でも思う)。
 これは湯島聖堂でもそうでしたが,孔子廟っていくつかの門をくぐって奥へと入っていくんですね。これはなんか意味があるのでしょうか……。ただ,この門は左側が「観光客サービスセンター」として使われており,どことなく重厚感というかありがたみに欠けるのでありました。
 この門を抜けると,絵馬が多数奉納されておりました。そういえば道教・仏教ともに絵馬文化はないようですね。台湾は孔子廟にのみ絵馬文化があるようです。この絵馬,どこで売ってるんだろうか,特に売ってる場所を見なかったような……と思っていたら,どうも門を入って左手にあった売店で売られていたようです。せっかく台湾に来たんだからなにか爪痕でも残していこうかとも思ったのですが,思ったよりも多くの日本人が爪痕を残しておられるのでまあいまさらいいかな……という考えに相成りました。ちなみに,日本人による絵馬は下手したら1割以上あったかもしれません。そういえば,孔子様は日本語を理解されるんでしょうか。いやまあ,それをいったらオシマイなのは分かってますが(日本の菅原道真だって現代語を理解できるとも限らんしなあ)。

 そして,門を抜けると,尺八の音が聞こえてきました。ん?と思って見ると,おじさんが尺八演奏中でした。NPがおじさん方向を見てしばらくすると,「川の流れのように」の演奏スタート。NPを日本人だと判断して,日本人向けの曲を流してくれたのかな,ありがたやありがたや,などと思い上がっていたのですが,さらにしばらくしてからその横の人に「日本人か」と問われたので,おそらく「川の流れのように」は偶然の産物だったと思われます。なお,てっきりサービスでやってるのかと思ったら,そんなはずはなく,ちゃんとCDを販売しておられました。まあそりゃそうだよね。


観光客サービスセンター

 そして,いよいよ目の前に現われるのが大成殿。あらためて湯島聖堂の大成殿と比べてみると,やはり建築様式は完全に台湾的であります。湯島聖堂は黒塗りだったのに対し,こっちは柱などは石を剥き出しにして,上部にはカラフルな装飾。
 とはいえ,道教仏教に共通していた,線香を持って歩き回る方式は採用されておらず,また電飾でチカチカしていることもありません。いたって静かな場所であります。大成殿の内部も天井部は派手ではありますが,正面は簡素で,孔子像が髭を生やしてたりということもありません。という意味で,儒教寺院(という表現がいいのかは分からんけど)と道教仏教寺院は大きく異なるものでした。なお,そもそも儒教を宗教として道教仏教と並列させて儒仏道とかいっていいのかどうかは分かりませんが,NPは加地伸行氏の本しか読んでおりませんので,とりあえず宗教扱いはしておきたいと思う所存です。

 ちょっと面白かったのが,脇と裏の柱は装飾がないシンプルなものだったこと。台湾の寺院で普通の柱を見ると,とても新鮮な気がします。


 大成殿のさらに奥に,崇聖祠という建物があります。
 解説に,「孔子廟の設計は,中国数千年の宗族倫理制度と関係がある」と書かれておりますが,台湾でも「中国数千年の歴史」っていうフレーズを使うんですね。日本では半分ネタ的に「中国四千年の歴史」というフレーズがありますが,「四千」ではなく「数千」とするあたり,歴史に忠実であるという見方も出来そうです。考えてみたら,台湾的にどうかはさておき,孔子の教え自体はいろいろな王朝を通じてこれまで残っているのは事実なので,孔子廟的には「中国数千年の歴史」という表現で問題ないんだろうな。


 最後に,中をぐるっとまわっておしまい。


 上にも書いたとおり,仏教寺院が極めて道教的であった(正確には「道教的」とはなんなのか分かってないので,仏教寺院と道教寺院は似ていた,というべきかな)のに比べ,孔子廟はあまり道教的ではありませんでした。
 ただ,湯島聖堂に比べると,装飾は台湾的であるのは間違いないです。
 ちなみに,孔子廟の案内にある「儒教文化の洗礼を受けましょう!」ってのはどういう意味なんだろうか。

 とまあ,比べてみると面白いわけで,これはなおさらキリスト教会に行ってみたくなるわけです。圓山駅近くの地図によると,この近くに教会があるようなので(今度はちゃんと写真撮って記録に残したから場所が分かる)そこに向かわねばなりません。時間的には一応17時よりは前に着いておきたい。他方で,この孔子廟の横には保安宮という著名な道教寺院もあります。順序をどうするか迷いましたが,やはり保安宮から見て行くことにします。時間的・行程的に,この旅最後の道教寺院であります。

保安宮 孔子廟側の入口
入れず
向かい 保安宮へ

 保安宮の向かいではなにやら賑やかにライブ?イベント?をやっていて,たいそう盛り上がっておりました。
 それはさておき,保安宮。基本的に流れはこれまでの道教寺院と一緒です。混雑度からいくとこれまでのどの道教寺院よりも混雑していた印象。龍山寺の次くらいかな。やはり人気のある場所のようです。いまいち道教寺院について分かってないので,どうすれば「人気のある道教寺院」になることができるのかが分かりません。場所なのか,歴史なのか,主祭神(←これは神道用語なのかな)なのか,雑誌のパワースポット特集なのか,それとも三大○○に入っていると参拝客が吸い寄せられるのか……。
 ここの特徴は,線香・金紙セットを買うと(正確には,50元は賽銭箱に入れてくれ,という扱い)その中にお菓子が入ってくるということ。このお菓子は金亭で燃やすのではなく,持って帰ってよいようです。お供えしたものを家に帰って家族と食べる,ということでいいのかな?

 それにしても,孔子廟をみて台湾的に装飾豊かだなとか思ってましたが,やはり道教寺院は孔子廟の比じゃなかったな。


小さい

飾られてる言葉の意味が
分からないのが辛いところ

ユネスコマーク入りの紙袋
この袋も処理に困る

お菓子入り

 この保安宮は,なんとなんと10カ所もお供えポイントがあり,線香を持ってあちこち歩き回る必要があります。なにが困るって,あまりにのんびりしすぎると,線香が段々短くなってくることです。観光気分で呑気に写真撮ってる場合じゃありません。もちろん,そもそもそういう場所じゃないんですが。
 あと,いまいち分からないのがおみくじの正しい使い方。基本的におみくじそれ自体に興味は全くないんですが(直近でおみくじをひいたのが何年前なのかさっぱり分からない。少なくともここ10年はひいてない),聖天宮で大々的におみくじが取り上げられていたのに対し,台湾では「一応おみくじの為の木は置いてあるけれど,実際にそれを投げている人は数十人に一人」という状態です。おみくじをひくために大行列,という状況はどこにもありません。もちろん,おみくじのための陰陽の木自体はあちこちにあり,投げる人は周りを気にせずに投げておられます。なので,おみくじ文化それ自体はしっかりと根付いてるようです。う〜ん,最後までよく分からなかったのは残念ですが,まあ特に誰かに聞く気もなかったのでまあいいや。


今回のお供えポイント一覧
奥には4階まであるのです

正殿

描かれている人が
台湾っぽいですね

突然現われる日本語にびっくり
英語よりも上にあります

香炉が線香で一杯にならないように
係員が回収しております

孔聖夫子
名前だけ見ると孔子と関係ありそうですが
果たしてどうなんでしょうか

神農大帝

神様の造形がこれまでの道教寺院と
違いますね。なんでだろうか
ある意味,仏教に近いような
あと,後ろの龍の絵が印象的です

保思堂
ここは絵だけでした

3階へ。大雄宝殿
指南宮で聞いたことある言葉です

見るからに仏教的な3人組です

4階から見下ろす

4階。太陽光を浴びる,
さながら屋上庭園のような雰囲気

やはり柱は凄いな…

獅子ではなくライオン?

供えられたお花を回収するおじさん
もうちょっと丁寧にやってもいいような
みなさん供えたあとのことは
気にしないのかな……?

 そんなわけで,駆け足で10カ所に線香を供えてきました。途中でなんか本数がおかしくなったので,多分どこかで何かを間違えたんだと思いますが,まあ細かいことは気にしない。
 ちなみに,ここの金亭は道を挟んだ場所にあります。最後に金紙を焼くっていう行為は宗教的に大事そうなイメージなんですが,金亭って軒並み変な場所にあるんだな……。そういえば,金紙を金亭で焼く際,1枚1枚はがして焼くべきなのかがよく分かりませんでした。人によってまちまちというのが正解かな。なんとなく1枚1枚入れていった方が丁寧でよさそうな気はするんですが,紙同士が結構くっついてて剥がすのが面倒なのです。数枚まとめて入れていく,ってのが現実的なところでありました。

 そして,最後に地図にかかれていた教会を目指します。とりあえず17時よりも前に着かねば!
 というわけで,頑張って17時よりも前に教会前に到達しましたが,残念ながら観光教会ではないためか,閉まっておりました。そういえば,台湾って治安がとてもいいイメージなのに,建物の扉とかはかなり厳重です。国民党が台湾にやってきたときの混乱の名残なのか,それともそれより前の日本統治時代の名残なのか,さらに前のころからなのか……。あるいは,対台風の問題なのかな。

地図を頼りに 教会
幼稚園を併設する教会が多いのは、全世界的なことなのかな?
ミサの時間

 とりあえず,外観を見る限り,教会は教会。台湾的な装飾はなく,台湾化していないように思います。中には入れればベストでしたが,外観を見られただけでも満足満足。

 そんなわけで,台湾旅行最後のイベント,新北投温泉へ向かいます。


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