2024年のパリ五輪で日本チーム初老ジャパンがメダルを取ったことであらためて注目されたのがバロン西。
書名となっている「バロン西伝説」とは、硫黄島で米軍が「オリンピックの英雄、バロン西、出てきなさい。あなたを死なせるのは惜しい」と呼びかけたというもの。そして、自決に際し、部下に命じて頭を宮城に向けさせ、ピストルでこめかみを撃って果てたというもの。の2つ。
この伝説の検証は最終章でおこなわれることになる。
それまでは、第1章にロス五輪の金メダル、その後は西氏の人生を振り返る並び。非常に緊迫感のある伝記となっている。
馬側の人間なので、どうしてもロス五輪のことに着目してしまうが、日本産馬で挑んだベルリン五輪、幻の東京五輪への流れ、戦車隊に配属されるも戦車を生かせない硫黄島に転進し、そして最期に至る硫黄島の戦いなど、時代の中で苦しむ西氏の姿は非常につらい。
他方で、ロサンゼルスでは車を乗り回してお金を無心し、新橋で皇族とともによく遊ぶなど、バロン西の明るい側面も生き生きと描かれていた。
非常に丹念に描かれた、素晴らしい作品。JRAは東京五輪が終わった今からでも遅くないので、文春から版権買い取ってなんとかこの本を再び世に出してほしい。
ちなみに、Amazonの書評において、本書は吉橋戒三氏の「西とウラヌス」とほぼ同内容であるとの指摘があった。吉橋本は国会図書館のデジタルライブラリで閲覧可能なようであるが、私は未読。余裕があれば読んでみたいところだが……
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