アパレル大手、オンワード樫山の創業者による日経「私の履歴書」への加筆修正が前半60%。後半40%が冠「オンワード」の競走馬事業についてのお話。
私は競馬ファンなのでオンワードと言ったら馬主となるのだが、樫山さん自らあとがきにて「世間では私は、樫山の経営者としてよりも、”オンワード”の馬主としてのほうが通りがよいらしい」と書かれている。本当だろうか。
もちろん競馬部分に興味があって買った本だが、小諸から三越に奉公に出され、そこから独立してぐんぐん会社を成長させていく前半部分も面白い。
昭和時代のストーリーだが、この時代に成功した方ならではの泥臭さが随所にみえる(多分こういうところには書けない汚いことも多かったのだろう)。
前半があってこそ、経営者的発想が随所に出てくる後半競馬パートも、単なる馬主の自慢話とは異なる面が見える。
オンワードといえばオンワードゼアとミスオンワードが否が応でも思い浮かぶが、これ、馬主を始めたかなり序盤の馬なのだな。母馬の購入経緯や、オンワードゼアの複雑な馬生についてなどは非常に興味深い。ミスオンワードのダービー出走は、Wikipediaでは世論に押されたとされているが、ここでは樫山さん自ら希望したような書きぶり(こういうタイプの人が世論負けするとは思えないので、まあこっちが正解だろう)。
有名な仏ダービー直前のハードツービート購入については、その経緯がかなり詳しく書かれている。
オンワード牧場自体は既に売られてしまったようだが、その設立経緯など、昭和の競馬の姿をのこす本として、非常に貴重。

樫山純三―走れオンワード 事業と競馬に賭けた50年 (人間の記録)
樫山純三-走れオンワード事業と競馬に賭けた50年-

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