野球賭博と八百長はなぜ、なくならないのか 阿部珠樹

賭博一般

書かれたのは琴光喜関らが野球賭博への関与で引退した2010年で、大相撲が八百長問題で春場所中止にまでなった2011年の議論は含まれていない。が、2011年に論じられた論点は全て網羅されている。その意味で、非常にしっかりとした議論がなされていたことが事後的にも証明された本。ただ、まさか携帯電話のメールにしっかりした証拠を残す力士がいるとは誰も予想できなかっただろう。

本としては、「賭博は八百長のゆりかご」というキーワード(検索しても出てこなかったのだけれど、言葉の響き的に海外で使われている用語かもしれない)を軸に、八百長とは何か、何が許されて何が許されないのか、ファンは何を期待しているのか、などをしっかりと論じている。日米の野球賭博の事例(必ずしも八百長が成功しているわけではないこと)、八百長が実際に成功するにはプレイヤーの能力が重要であることなど、大変に興味深い話が続く。

今阿部氏が再度八百長について論じるとすれば、金沢の”沖ダイブ”事案や笠松の事件、あるいは競艇の藤原菜希選手の事案や峰竜太選手の事案などをどのように書くだろうか。

とにかく、八百長について非常に地に足がついた議論がなされており、参考文献の引用などもしっかりしている。八百長問題に関しては、こういう冷静な議論が進むことが極めて重要だとあらためて感じさせられる。

野球賭博と八百長はなぜ、なくならないのか
野球賭博問題に揺れる角界――大関琴光喜、大嶽親方の解雇処分、 理事長の交代劇、NHK放映の中止のなかでも行われた名古屋場所。 大相撲の野球賭博問題がおこる背景、角界の賭博体質、暴力団と興行の歴史とその構造を深く分析し、野球賭博から派生する八百長疑惑を 鋭く論考する衝撃のノンフィクション新刊。プロ野球界の「黒い霧事件」、...

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