2002年出版の自伝的な本。アドマイヤコジーンで初G1制覇を果たす前に出ており、まさに頂点に向かってのぼっている後藤騎手の言葉が熱く語られている。
面白かったのはアメリカに単身遠征した際の話。当初予定していたエージェントがいなくなった話やその後のフィラデルフィアの話、さらに信頼できる黒人エージェントとの出会いと別れと再会(綺麗に書きすぎてる嫌いはあるけど、まあ自伝本ってそういうものだよね)。
玉ノ井元騎手との最後の言葉(210頁)なども複雑な気持ちになる。
もう1つ本人が書きたかったと思うのが、ご家族の話。弟への部分は蛇足感があるが、ご両親とのことはかなり踏み込んだ内容まで語られている。ちょっと『特別模範男』で語られた藤田伸二騎手とご家族の関係を思い出した。
みんなが気になる木刀事件については、「語っておかなければならない」としつつもかなりさらっと。
「とにかく、少しでも自分を傷つけようとする人間を、どうしても許せない時期だった」(113頁)というのがヒントだろうか。「殴った」と書かずに「殴ってしまった」と表現していることには若干モヤモヤする。
もう1つもやっとしたのが8章の「もしも後藤浩輝が犯罪者だったら」という部分。悪いのは後藤さんでなく編集者側なのだが、この書きぶりをみると、木刀殴打は犯罪行為ではないと思っていることが明確になってしまう。体育会系の世界の中の出来事とではあるけれど、もうちょっと編者側が空気を読んだ方がよかったのでは。

いずれにしても、デビューから10年経った後藤騎手の真っ直ぐな思いは読み取れる。
もちろん既に後藤騎手は後藤元騎手になっており、後藤さんの最期と家庭環境(特に父親)を結びつけて色々思って心が痛くなるが、それを忘れて読めば本当に真っ直ぐな思いのみえる(まあそれゆえ木刀殴打についてもそういう認識なんだろうな、というのが分かってしまうのだが)本。
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