フォトエッセイ、ということで、写真がメインで中身がスカスカなのだろうと思って手を出していなかった。実際は、構成担当の島田明宏氏の手がかなり入っていて、むしろ写真ページは少なく、充分に読み応えがあった。
著者がエビショーの本なのに最初と最後にエビショーのインタビューがあって、言われなかったら島田氏の単著だと思うはず。
本が出たのは2000年3月。ウメノファイバー→エアジハードで好騎乗を連発し、エルコンドルパサーでフランス遠征を終えた、まさに油が乗っている時期のもの。自分から見ていても、この時期の蛯名騎手は神がかっていた。懐かしい。
もうちょっとフランス遠征時の裏話などがあるかと思ったが、思いのほかあっさり。本が出た2000年の夏にはアメリカ東海岸に長期遠征をすることになるのだが、この本にはその気配はまったくない。
グリーングラスの菊花賞(意識にあったのは緑の覆面であって馬ではなさそうだが)をきっかけに競馬に入ったというのはびっくりだし、なにより蛯名信広氏はあくまで副次的な役割しか果たしていなかったとは思ってなかった。
また、蛯名騎手の部分もそうだが、島田氏ならではの部分が、矢野進氏、小島太氏、森秀行氏、吉田照哉氏、吉原毎文氏、渡辺隆氏のインタビュー。いずれも非常に興味深い内容。
ギャロップダイナの口取り、森調教師が蛯名騎手と組むようになった経緯、伊藤暢康騎手が怪我をしたことが蛯名騎手にプラスに働いたことなど、知らなかったことも多く、非常に面白い本だった。

冷めて、静かに、熱くなれ: 蛯名正義フォトエッセイ
蛯名正義(’99関東リーディングジョッキー)が語る初のエッセイ! 光の射す方へ──「オレはオレ」を貫き、夢中で攻めた14年のメモリアル 「負けた悔しさを忘れず、「いつか上にいきたい」とつねにカッカしながらも、どこか冷めていた……」──(本文...

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