ノミ屋などをやっていた安部氏が競馬について好き放題書く本。こういう人がこういう内容の本を出せる、日本社会が暴力団とともにあった時代なのだなあ、とあらためて思う。裏で泣かされた人は多数いるだろうから、決してこれがよかったとかいうつもりは無い。
全体的にJRAによる八百長等の悪口にあふれている本。ノミ屋を正当化するのだから仕方が無い部分もある。書いてあることの何割が真実なのかは誰にも分からないけれど。
もっとも、馬券学的なことは予想印とオッズの乖離を意識して馬券を買う、というもので実は非常に理にかなっている。今はAIがあるからそのあたりの妙味もなくなっているだろうが……。
また、親切だけど身形の悪いオジサンが教えてくれる馬券は買ってはいけないと子供ながらに理解していた(48頁)のも凄い。
中山大障害終了後に万馬券を当てた客にトロフィーをあげていた、というエピソードは(仮にネタであっても)、大障害が最後の大一番だったことや万馬券の希少性など、いろいろな時代背景が見えてよい。
時代背景があり、テレビ等で見る安部氏の姿を知っている人が読む分には楽しめる。彼を知らない人からしてみたら、さんざん暴れてきたヤクザが何を偉そうに、という感じの本になっている。平成の頭に書かれており、良くも悪くも戦後昭和の日本社会・日本競馬界を描いた本だなあ。
極道の恩返し: 安部譲二ワルの馬券学 (文春文庫 あ 18-2)
競馬はスポーツではなくバクチです。ノミ屋で稼ぎ、馬主になり、日本一の予想屋と自称の著者が競馬界のウラのウラをご教示します
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